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涼やかでいて荘厳な鐘の音が、静寂の広間に響き渡る。
カラン、カラン、カラン
「国王陛下、ご入室!」
鐘の余韻を残して、広間に声が高らかに響く。
カッ
居並ぶ騎士の靴音が鳴った。
長槍を者に構え、敬礼姿勢を取る。
空気が変わった。
(入ってきたんだ)
ひれ伏したままでも分かる。
一瞬、ひんやりと冷たい空気が流れた。けれども、それは嫌な感じじゃなくて……
「勇者ヒイロ。表を上げなさい」
威厳ある音色。しかし、透き通った不思議な重みのある声だ。
「はい」
声の主に応えて、玉座を見上げた。
アルファング王国
国王陛下
その素顔はベールに包まれている。
仮面を被り、漆黒の紗をまとう。
『シュヴァルツ』と……
王国騎士団長の称号が『黒』である所以である。
国家最高権威を守る剣がシュヴァルツ
『黒』は国王の象徴である。




