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「ほら、いるでしょ。クラスに一人。あれ、いたの?って奴。まさにそれが彼です」
碧眼が色素の薄い目をチラリと見やった。
「空気モブとは違う、存在感がない人。あれ、いつからいたの?とか。体育祭で絶対得意じゃない競技にいて、どうしたの?って聞いたら、そこしか空いてなかった。とか」
「あー」
なんか分かる。
「そのくせ余った給食のプリンは、上手い事かすめとってくんですよね〜」
「そうそう!」
あるある。
つか、異世界にも体育祭や給食のプリンあるんだ。
「その存在感を究極に薄めた存在が彼です」
「ほー」
ゼフィルさんの給食のプリン発言で、彼が偉大に見えてきた。
「って、あれ?いない」
さっきまで、そこにいた筈なんだけど?
「勇者様、こっちです」
「わうっ」
いつの間に?瞬間移動でもしたのか?
「これが彼の才能です」
「なるほど」
存在感が薄いと、普通の移動が一般人には瞬間移動に見えるのか。
「ミスディレクションは使っていません」
と、ゼフィルさんが解析する。
「それでこの瞬間移動はズルいですね」
「同意見です」
「そんな事ないですよ。カフェで順番待ちの列に並んでいても、よく抜かされます」
「それは悲しい」
「「って、わうっ!」!」
俺とゼフィルが同時に奇声を上げた。