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一体どうして俺は今、有力貴族諸侯から求婚されているんだ?
そもそも『受け様』ってなに?
「国語辞典オープン!『受け様とは、男性同士の性交時に陰茎を挿入される側である。好みの巨根を想像すると、後ろの窄まりが疼いて、パクパクしてしまう事がままある』」
「キャー!つか、疼きません!パクパクしません!勇者装備の国語辞典、勝手に使わないでー!」
「残念♠」
「残念でもありません!」
ふぅ、とゼフィルさんはため息を吐く。
「国語辞典オープン!は、くせになりますね」
にっこり。
(話をすり替えた。たくも〜)
「とにかく!俺は受け様じゃありません」
「しかし……」
神妙な面持ちで、マラカイト色の濃い碧眼を凝らした。
(どうしたんだろう)
「重要な事でも?」
こくりと一つゼフィルさんは頷いて見せる。
「事実、国内外からの縁談が後を絶ちません。そして彼らは有力貴族。貴族が何の勝算もなく動くでしょうか」
「それは……」
「貴族とは打算的で、根回しの上手い生き物ですよ」
「何の事ですか。俺は貴族と繋がってないです」
「承知しております。問題はそこではありません。勇者様と繋がろうと画策する貴族がなぜ皆、子息を差し出すのか……というところです。逆を言えば、子息を差し出せば勇者様と姻戚関係を結べると考える根拠は何か?」
「それはその……俺がう、受け様……という事だから?」
「正解です!ヒイロ様は受け様なんです!」
だからッ
「俺は受け様じゃッ」
「ストーップ!」
ぴっ
立てた人差し指が唇につんっと触れた。
「ではなぜ自称・受け様ではないヒイロ様が、なぜ受け様になったのでしょう?」