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「まさか!魔王を倒し世界を救った勇者様は国賓です。我が国に凱旋された大事なお客様に滅相もない」

「ですが、この部屋……」


 中央のテーブル

 アフタヌーンティーが似合いそうなアンティークのテーブルの上に、まるで不釣り合いな……


(本)

 じゃなさそう。

(ファイル)

 かな?


 今にも崩れ落ちそうなファイルの山!

 山!

 山!


 何とかせねばなるまい。


「ファイリングのお手伝いをしなくてはならないようにしか見えないんですけど……」

「お伝えしておらず申し訳ございません」

 フッとゼフィルさんが息をついた。


「これ全部、勇者様のお見合い写真です」


「エエェエーッ!」



 お見合いですと〜!?



「魔王を討ち取ったとの一報が入って以降、勇者様と婚姻を結びたいと申し出る国内外の有力貴族諸侯が絶えませんもので、毎日、お見合い写真が送られてくるのです。気がつけば、ヒイロ様のお部屋がお見合い写真でいっぱいになってしまいました」

「こ、この量は……」


 全部真っ直ぐ一つに積み上げたら、天井に届いてしまうぞ。


「本棚をお部屋に運ぶ手もあるのですが、お見合い写真は、ずっと保管する物でもありませんので」

 それもそうだ。

「でも俺、結婚はまだ早いです」

「貴族は十代で婚約する方もおみえです。ヒイロ様の年齢でご結婚なさっても、早くはありませんよ」

 こちらの世界ではそうなのか。

「対外的な事もありまして、全てお断りする訳にも参りません。この中から数名お選びになって、お会い頂ければと思います」

「俺にお見合いしろって事ですかー!」

「はい。ヒイロ様はご聡明で助かります」


 うぅぅ〜

(嫌って訳じゃないけど〜)


「お会いになられてご結婚を前提にお付き合いするかどうかは、ヒイロ様に委ねます。もちろん、お断りになっても構いません」

「そういう事なら……」

「ありがとうございます。これで侍従長として肩の荷が下りました。ヒイロ様に断られたら、どうしようと思ってました」

「いいですよ、ゼフィルさんを助けられるのなら。会うだけで大丈夫ですよね」

「はい、大丈夫です」

 会うだけならいいかな。


「急かしてしまい、申し訳ございません。早めに一人か二人お決め下さい。貴族への取次も色々ありまして」

「ゼフィルさんも大変ですね」

「すみません」

 立場があるのだろう。

 社畜とはこういうものである。


「それじゃ」

 王様との謁見までに少しでも目を通しておくか。

 手元に一番近い一冊を取って開いた。


(………………?)


 あれ?



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