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冒険に出ていたのではなく、騎士団の遠征に出ていたのだとしたら?
お土産は遠征先で入手した物だとしたら?
合点がいく。
しかし証拠はない。
容貌すら分からないんだ。そうかも知れない……という予想の域を出ない話で。
(シュヴァルツに聞いても、先代の事は教えてくれない。たぶん)
今まで話さなかったのだから。
「ところで、立ち入った事を聞いてしまったのではないでしょうか」
申し訳なさそうに、ゼフィルさんが肩を竦めていた。
「そんな事は全然。寧ろ楽しくお話できて嬉しいです」
「良かった。初対面なのに、色々聞いてしまいまして、失礼があったのではないかと心配してしまいました」
「俺こそ、ゼフィルさんが親しみやすい人なので、たくさん話してしまって」
「そんな風に感じて下さっていたのですね。実は私、前職は諜報員でして、聞き上手である事には少々自信を持っています」
「エエエッ、ゼフィルさんはスパイ!?」
「はい、正解です♪」
だから俺が城にいた期間、ゼフィルさんはいなかったんだ。
ゼフィルさんはにこりと微笑んで、はぁ〜と溜め息をついた。
「それがどうして、侍従長なんてものになってしまったのか。社畜は御上の人事に逆らえないのです」
「ハハハ」
異世界にも社畜は存在するんだ。
「勇者様、せっかくお話したご縁です。もし宜しければ先代シュヴァルツについて、私がお調べ致しましょうか」
「いいんですか?」