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冒険の旅が楽しいのは分かるけど。
「そういえば、旅から帰ってくると色んな珍しいお土産くれたなぁ」
きれいなもの
ビックリするもの
真っ赤な珊瑚は、陽光にかざすとキラキラ虹色に輝いた。
伝説の一角獣の角だって言って渡してきた角は、実は大トナカイの角で噓つかれた。
スライムのクッションもあった。夏はヒンヤリ気持ち良かったな。
あと変なものも渡された。
(ガニドンの右バサミ)
あれ、普通に蟹のハサミだったよな?
蟹鍋にして美味しく頂いた。
思い出がいっぱいだ
「連絡くらいくれてもいいのに」
はぁ〜
溜め息が出てしまう。
「マルス様と仰るのですね。そういえば先代シュヴァルツが、黒髪の騎士だったと聞きますが」
「エエッ」
「突然お辞めになられて、今のシュヴァルツに称号を譲られたのだとか」
そんな話、シュヴァルツから聞いてない。
「マルスさんが先代シュヴァルツ?」
「どうでしょう。そこまでは……先代は謎大き人物でして。常に鎧兜を身に付けられて、人前で素顔をさらさなかったのだそうです。デスクに向かって事務作業を行う時ですら、兜を外さなかったのだとか」
「それは……」
「はい。黒髪だったという証言が残るだけで、何も分かりません」
「でも」
「そうです」