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侍従長としては若い年齢で、と言っても俺より年上だ。たぶん。
(三歳か四歳上かな)
見た目の予想では。
「先程は驚かせてしまってすみません」
「えっと?」
「マッドパペットの件です」
そうだ。
「城内に魔物がいるなんて!」
「でしょう!実はあれ、シュヴァルツの発案でして」
「ええッ?」
シュヴァルツは城内で魔物を飼うつもり?
「ほんとう、そうですよ。我が国の情報はどの国も喉から手が出る程欲しがっていますからね。放たれる諜報の魔物を狩っていたのではキリがないからって、一部の下等モンスターはわざと生かして、実戦訓練に使ってるんです」
「訓練ですか」
「城内勤務者は、武官・文官問わず一定レベルの戦闘技術を有するようにって。お蔭様で……」
ヒュン
刹那の光が高速で上空へ飛んだ。
「わっ」
ドサッ
天井から吸血コウモリが落ちてきた。ナイフが一撃で仕留めている。
「はい、私もこの通り。一定レベルの戦闘技術を有するようになってしまいました。文官なのに」
「アハハ」
笑うしかない。
「因みに下等モンスターの情報収集など、たかだかしれています。外部に漏れても支障ありませんのでご安心を」
「アハハ」
シュヴァルツの事だ。そこまで見越して、侵入した魔物を利用しているのだろう。
「ところで勇者様。マルス様とは、どのような御方でしょう」