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アルファング王国
建国から国を守り、街を守り、国民を守り、幾度となく襲い来る脅威と渡り合って、戦い抜いてきた精鋭がいる。
軍事を統括する王国騎士団
その中でも、個々の能力に著しく秀で、極めて高い戦闘力と高度な技術を有する、一騎当千の実力者のみで構成されたエリート部隊
黒の守護騎士団
『シュヴァルツ・シュッツ』
彼らを率い、王国全ての騎士の頂点に立つ騎士団長
彼には特別な称号が与えられている
『シュヴァルツ』
そして、彼の持つ獲物は……
俺は空中から見下ろしている。
騎士団長シュヴァルツが、俺を上空高くに放り上げたからだ。
彼の持つ獲物の名は
『シュヴァルツ・シュッツエンゲル』
漆黒の大剣
屈強な成人男性でも持ち上げるのがやっとであろう、黒光りする両刃の大剣を彼は片手で軽々と振り上げた。
一閃
刃が落ちる。
(見えなかった)
剣が宙を駆る速度に視覚が追いつかない。
襲いかかる泥の魔物が二つに裂ける。
四つに裂ける。
八つに裂ける。
霧散した。
一呼吸して、剣圧に耐えきれなかった床が割れる。
人々は呼ぶのだ。
剣を抜けば必ず勝利する彼に恭敬を込めて
守護の大剣、と。