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 フフ……


 吐息が額を撫でる。

 長い睫毛がゆっくりと開いた。


「ご油断召されましたね」


 フフフ……


「解放はして差し上げられませんよ」


 風が流れた。

 不意の突風が右目に落ちた髪をかき上げた。

 空へ。


(眼……)


 そこにある筈の闇色の宝石を覆う、黒い眼帯。


「おっと、失礼致しました。醜い顔をお見せしてしまいましたね」

「醜いだなんて!全然そんな事ありません!寧ろカッコいいです。美形です!」

「これは、これは。お褒めのお言葉、有難く頂戴致します」

「なななァーッ」

 俺、なに言ってるんだ。よりによって。

「おや、少し顔が赤いようですが?ヒイロ様」

 とっ、とにかく何か話題を変えないと。

「ま、街中でその呼び方は」

「ご安心下さい。波動結界を張っております。結界の効果により、音の波である声も遮断します。周囲にヒイロ様のお名前は聞こえませんので、騒ぎになる事はございません」

「そっか」

 街の人には、何年か振りのパレードをたくさん楽しんでほしい。

 ほっ。

(良かった)

 ……なんて事はない!

「おや?如何なさいましたか」

「この状況なんですが」

「はい?」

「あの……腕」

 俺の体、彼の腕の中に囚われたままだ。

「フフフ、貴方様はやはりお可愛らしい」

「なっ!そうじゃなくって」

「ヒイロ様はお可愛らしいですよ。ジタバタもがいても、私の腕の中から逃れられぬ籠の中の鳥。麗しく非力な小鳥を、どこに愛でぬ者がおりましょう」


 この執事さん、ちょっと変。


「俺は勇者です!」

「存じております」

「なので!」

「お可愛らしゅうございます」

「可愛くありません!」

「離しませんよ」


 ハァハァハァ

 話が全然、噛み合わない。


「訂正致しましょう」

 執事さんから思いもよらぬ提案が……


(話、奇跡的に噛み合った?)



「私を離さないで下さい」



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