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 動けなかった。

 目の前で人が死んだというのに、なにも……


 短剣が飛んできたのは背後。

 俺をすり抜けて、侍従の背中に一撃。気づいた時には、短剣が彼に刺さっていた。


 危険だと《直感》が判定する。

(否)

 《直感》が危険判定していない。

(どうして?)


 王が住まう厳戒態勢の城内で短剣が飛んできたんだぞ。

 それを危険判定なしなんて。


 《直感》がバグってる?

 そんな筈は……


(待て)

 《直感》は確かに危険判定を下した。しかし俺が反応する前に短剣が飛んできて、侍従を刺した。

 そして現状、危険判定なし。


 城内で武器の携帯が許されているのは……


「下がれ!」

 背後から飛んできた声と同時に。

(足、浮いた)

 体が宙に浮いている。


 うぅん、これは……



「お姫様抱っこー!!」



 本日二回目のお姫様抱っこ。

 なぜ一日に二回もお姫様抱っこされてるんだ!?


 ま、まさか……


「スキルに《BL》なんて追加されてないよね?」

 ちょっと心配だ。

「びーえる?なんだ、それは?」

「BLっていうのは、国語辞典オープン!」

 勇者装備には国語辞典が付いている。

「ボーイズラブの略である」

「ぼ〜いずらぶ?」

 あ、この世界にはBLもボーイズラブも、両方言葉が存在しないんだ。

 時々、異世界では言葉が通じなくなる。

「えっと、ボーイ。つまり男同士の……」

「話は後だ」


 華麗なステップで後方に距離を取った。

 俺を腕に抱えた『お姫様抱っこ』のままで。





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