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嫌な予感は、これだったんだ……
《スキル》は表裏一体。リッツが存在する限り、ベニクラゲの触手は不死。
破壊されても、破壊速度を上回り再生する。
しかし。
リッツの存在が失われた時。
即ち、リッツの命が尽きた時、触手は死を迎える。
(もういいッ、これ以上は!)
ウッ、なんだ。これは?
意識が引っ張られる。俺ではない、俺の偽物の中へ。
相国は、なにを?
「構わない。この一瞬だけ、存在すれば」
リッツが翔んだ。
触手が真っ赤に染まる。高速再生する。
リッツの血液を、命を吸って。
「俺の拳が届く!」
リッツの拳が赤く染まった。触手が拳を包み、そして伸びる。相国のいる方向へ。
ただ真っ直ぐ、ひたすら真っ直ぐ。
「無理矢理、動かした体で打つ拳など涼風に等しい」
拳は相国を通り過ぎた。
あぁ……
声の形に唇が嘆息した。
「それでいい」
口角がクッと上がった。
「届かせたいのはお前じゃない」
拳は、
「ヒイロ!」
俺の……もう一人の俺の左胸に、
「偽物がッ!全然似てねぇんだよ!」
最初から、分かってたんだ。リッツには。
もう一人の俺が、俺じゃないって。