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 果てなく長い旅路。

 激闘の末、世界から光を奪い、永久(とこしえ)の闇に覆い尽くさんとする魔王は、勇者によって討ち滅ぼされた。


 世界は光を取り戻した。

 花が咲き、木漏れ日が揺れ、雨が降り、虹が輝く。

 世界に平和が訪れた。


 この世界に生きる人々は、もう魔王に脅える事はない。

 夜が来ても安心して眠り、やがて朝が訪れて、明日という日を迎えて笑い合う事ができる。

 そうして未来は連綿と続いていく。


 世界は生きとし生けるもの、全ての生命で満ち溢れている。



 俺は、真の勇者になったんだ……




(俺、思い残す事はなにもない)


 だから昇天します。


(いや、ほんとうは思い残してる事、山ほどあるんだ)


 もっと旅つづけたかったなぁ。

 俺を送り出してくれた王様や、王国の皆に再会して、ありがとうって言って、そうして新しい旅をしてみたかった。


 生まれ変わった世界の色んな場所に行って、美味しい物いっぱい食べて、たくさんの人に出会って……


(結婚……も、ちょっぴりしてみたかったかも)


 あ、でも結婚すると旅に行けなくなっちゃうか?

 家庭を顧みず冒険ってのも、人としてどうかと思う。


(ま、ゲームとか異世界転生もののラノベだったら問題ないんだけどね)


 旅の仲間に迫られたりとか、旅先で出会ったお嬢様に見初められたりとか……ラブコメ的な展開、全然なかったなぁ。

 ぼっち旅だったし♠


 何にせよ、今の俺にとっては贅沢で関係のない悩みだ。


 もうすぐ俺は天に召されるのだから。





 ……「私を置いて逝く事はなりません」



 突如、脳の深奥に直接響く、おどろおどろしい声。


「《死者蘇生・反魂の法・怨恨の儀》……」

「ストーーップ!」


 ハァハァハァハァ


 めちゃくちゃ俺、べっとり寝汗をかいている。確実に嫌な汗だ。


「おや、主様。生きていらっしゃったのですね。良かったです」

 むぎゅう〜

「わー、きゃー!」

「美しく気品あるこのお声は、まさしく主様!」

 むぎゅぎゅ〜

「待って、待ってー!さっき、すごく恐ろしい声が聞こえたんだけど?」

 禍々しいオーラも感じた。


「それは反魂の秘法ですね」



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