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「「君死にたまふことなかれ」」
リッツと俺の声が重なった。
その言葉だけ、この一節だけ、不思議と声が出たんだ。
(発動条件!)
固有特技には、魔法のように詠唱を必要とするものがある。
リッツの《スキル》は、詠唱が必要。
《スキル》の鍵を開ける言葉。発動のキーワードに俺が話した詩の一節を。
生きる決意を込めた言葉を選んでいた。
(でも!)
絶対神域発動下では、魔法も《スキル》も使えない筈。
ゴゴゴオーッ
空気が唸りを上げている。
(リッツの《スキル》が発動を開始している)
なぜ?
「何をした?」
相国が横たわるリッツを見下ろす。
「虫の息か」
リッツは答えない。
「羽虫が小細工を考えたところで、実行する余力もあるまい」
……が。
相国の動きが止まった。
止められたのだ。
「……《スキル》終焉からの再生」
「リッツ!」
これがリッツの《スキル》
ゴゴゴォオー
轟音と共に床に亀裂が走った瞬間に裂けて、砂煙が立ち上った。
現れたのは、長く伸びた何本もの紅い触手だ。
触手が相国の体を絡めとる。
「別名・滅びる生の共有」
なんなんだ?その不気味な名の《スキル》は……