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リッツはさ、すごく記憶力良くて……
俺が一回言ったこと全部覚えている。良くも悪くも。
言っておいて忘れてた事なんかも、リッツは覚えていて……
適当に言った事までも覚えてて。
『この夏限定!生スライムソフトクリームが出たよ!』
ってからかったら、適当に言ったサファイアとルビーの買えちゃう超高額の金額まで覚えてて。
(……生スライムソフト貯金してたらしい)
後でめちゃくちゃ怒られた。
(あの時は、わらび餅に黒ごまで目を付けて『只今、絶賛開発中!』)
って言って、(冷や汗流しながら(笑))ごまかした。
そしたら次の夏、『生スライムソフトクリームどうなった?』って聞かれて、『何のこと?』って聞き返したら、まためちゃくちゃ怒られた。
昔から頭がいいんだ、リッツは……
騎士候補生の頃から、学力トップ。
テストは全部の教科でいつも一位。
剣の腕だって抜きん出ていて。
(同期の中で一番強い)
剣より体術の方が得意だったなんて知らなかったけど。
(じゃあ、ただでさえ強いリッツがもっと強くなるって事だ)
すごい。
おまけに家柄も申し分ない。
互いを理解し距離が縮まるまでは、『貴族だ』って威張って俺を見下してたけど。
何でも言い合える仲になってからは、『……下級貴族だからな』って、ぽそっと言うようになった。
平民からしてみれば羨ましい出自だけど、本人はそれがコンプレックスだったみたい。
いつだったろう……
俺が話した詩だ。
この世界にはない詩。
元いた世界の詩。
騎士だからって、命を捨てる覚悟で戦わなくちゃいけないっておかしい。
ほんとうはこんな事言っちゃいけないのかも知れないけど。
捨てる命があるならば、俺はそれを拾う。
一人で迎える明日なんて嫌だ。
一緒に過ごせる明日がいい。一緒にいる明日を迎えたい。
命を捨てる覚悟の騎士は嫌いだ。
生意気にも、そんな気持ちをリッツにぶつけた。
「あゝをとうとよ」
「君を泣く」
君死にたまふことなかれ