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『この瞬間を待っていたよ……』


 声が深く浸潤した。


(相国!)

 彼は背を向けている。

 閉じた瞼の下の眼差しは、俺を捕らえていない。

 だが。


 ゾワリと胸の奥を得体の知れないものが撫でた。ハッして見下ろす。

 羽が揺れた。

 こんな所にっ。

 気づかなかった。足元の床に羽が突き刺さっている。


 読まれていた。


 俺が動くのを見越して、相国はここにも羽を放っていた。

 頭の切れる男だ。彼の頭の中には、対抗策が描かれているだろう。


 共倒れになるかも知れない。

 でも、それでも!


 今、動かなければリッツが!


「勇者様ァァーッ!」

 悲壮な叫びが突如響き渡った。

(兵士さん?)

 俺の背後、王国の宝剣を守る兵士さんの悲痛な叫喚が鼓膜をつんざいた。


 どうして、そんな声で俺を呼ぶの?


 兵士さんが青ざめている。

 不意に振り返った。

 俺の視界に、俺の姿が飛び込んだ。

(だれ!?)

 俺の顔、俺の姿をしている。

 勇者ヒイロ

 俺そのものだ。けれど、俺はここにいる。


 俺の正面、相国の背後に、もう一人の俺がいる。



 視界を染めた真っ赤に溢れる鮮血



 大量の血を流して立ったまま、俺が死んでいる……



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