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その拳が宙を掴む。
「空を駆れ」
リッツが拳を地面に撃ちつけた。
拳圧の生み出した風が旋風を起こす。
(リッツが……)
空中に浮いた。
自らの拳圧で。
「天翔けろ」
突き上げた己の拳の更に向こうを、隊長の眼差しがとらえた。
リッツが体を捻る。見事なまでに柔軟な動きは半回転して、拳を突き出す。
風圧が起きた。
(これ……)
《エーデルフリューゲル》だ。
執事さんが見せた飛行魔法。
あれには程遠いけど、それでも。
(小規模ながら《エーデルフリューゲル》を使っているみたい)
リッツに翼が生えたみたいだ。
風の翼
リッツが風に乗る。
「行けェェーッ!」
隊長の声が高らかに轟いた。
大空は自由だ。
お前の翼で、
お前の拳で、
「獲物を狩れェェーッ!!」
重力から解放された体
風に乗り、風を取り込み加速する。
彼がいるのは、大地のない世界
ここに限界は存在しない。
あるのは可能性だ。
リッツの風の翼
相国の純白の翼
互いの翼がぶつかる。
風圧と拳圧




