表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/186

17


「ほんの一瞬で構いません。主様、お目を閉じて下さい。このままではドライアイになってしまいます」

「……」

「困りましたね。私の声が聞こえないのでしょうか」

「……」

「パッチリお目々、可愛らしいですよ。麗しく可愛い御方よ、私の言う事を聞いて下さい。ねぇ、主様」


 フゥ……


 ビクンッ


 端の掠れた声が耳朶を這って、熱い吐息がくすぐった。


「耳が赤くなりましたね。僅かながら反応も見られました。良い兆候です。もう一度試してみましょう。……主様、フーぅ」


 耳の襞、狙いすましたかのように吐息を吹きかける。


 ビクビクンッ


「あぁ、なんとお可愛らしい。私の腕の中で、もがくように打ち震えながら小刻みに体を震わせて……主様だというのに、禁断の嗜虐心まで煽られる。素晴らしい反応です。……私、ただの雄に成り果ててしまいそうです」


 ビクビクビクビクッ


「おっと、失言を。申し訳ございません。さて、主様に仇なす魔力は感じられませんし、なぜ私のお声が届かないのか皆目見当が付きません。何らかの魔力が、主様の感覚を阻害していると考えていたのですが、魔力でないとするならば……」


 執事さんは小さく頷き、決意を固める。


「お耳そうじすれば、声が聞こえるようになるかも知れませんね」



 エェェーッ、そっちィィー!


 声が聞こえないのは、実は勇者たるに相応しい貞操を守るため、聞こえない振りをしているのであって!


「それではお耳、失礼致します。まずは右耳から……」


 えっ、ちょっ、なんで?

 どうして執事さんの顔が近づいてくるの?


「お伝え遅れ、申し訳ございません。ここは空の上。綿棒を使いましての通常のお耳そうじですと、勇者様を落っことしてしまいます。ゆえに私の舌で、お耳そうじ致します事をご容赦下さい」


 エエェェエー!!

 そんなの聞いてない。


「真っ赤に熟れたお可愛らしいお耳、失礼致します」


 カプっ


 チュー



 ………………ぷしゅー



「おや?ヒイロ様の額から、何やら水蒸気のようなものが抜けていったような?」


 俺、昇天します。


「ヒイロ様ァァー!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ