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相国が羽ばたく。
風と風がぶつかり、青い火花が散る。
互いに譲らない。両者中央で膨張した気圧が消滅。
暴風の刃は相国に届く前に霧散した。
が……
「肝を冷やしただろう」
「羽虫の起こす風など、我が前では涼風に過ぎんが?」
風圧は届かなかった。だが、
「哺乳類の弱点その1 気道を潰す」
「涼風がか?」
「哺乳類であれば、気道を潰せば死ぬ。お前の強さの限界だ。哺乳類の弱点は、そのままお前の弱点になる。哺乳類の弱点をつけば、お前を殺せる」
「だから?」
「こうする!」
(まただ!)
リッツの剣筋が見えない。
しかし風は吹いた。喉笛に向かって、鋭く。
違うッ、そうじゃない。
風が……止んでしまった……
ひらりと舞った、ひとひらの羽
「大口を叩く」
指に挟んだ羽一枚で、風を消失させた。
「黙れと言った。哺乳類」
剣先が相国をとらえた。
至近距離での剣圧。
「よけられまい」
「よける必要はない」
たった一枚の風のひらめきがリッツを吹き飛ばした。
だけじゃない!
(剣がッ)
リッツの長剣が粉々に消し飛んだ。
しかし。
「黙れと言った。忠告を聞かなかったお前が悪い」
リッツの剣
粉々に、それが更に粉々に割れた。
「哺乳類である以上、粘膜は鍛えられない」
風が再び吹いた。