160
思いやる気持ち。
その形は一つではない。
戦いから遠ざけようとする他者への配慮が思いやりじゃない、なんて事はない。
けれど……
(同じ窮地に立つ事も、思いやりなんだ)
踏みにじられたものを。
(取り返すには、誰かの力を借りちゃダメだ)
己が自身が立ち向かってこそ、誇りは取り戻せる。
与えられるのではなく、自分で掴むために。
騎士は戦う。
戦いに身を投じる。
「戦えと言った。だが...…」
死ぬな。
唇は確かにそう動いた。
「苦しめ!もがけ!足掻け!
私はお前達の苦しみを背負わない。お前達と苦しみを共にする。共に苦しみを分けるのが、私の生き方だ。
我が騎士団よ、我が手足となって矜持を貫け!」
オオオォォオオーー!!
「苦しみの中で足掻いてみせよ!もがき、足掻く、お前達の今の姿こそ、我が誇りだ。
生きるために足掻け!」
ウオオオォォオオーー!!
腹の底から叫びが沸き立つ。
戦いこそ生きる本能だ。
生きるために戦う。
傷つき倒れようとも、立ち上がって戦う。
決意を込めた槍で。
槍が握れなくなれば、拳で。
オオオォォオオーーッ!!
騎士達の拳が突き上がる。
彼らの拳は生きる象徴だ。
生き抜く覚悟だ。