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オオォォォオオオオーー!!
拳が天に突き刺さる。
怒号が揺るがし、士気が最高点に達する。
槍の握れぬ拳。
だが、その拳は誇りを掴み取る。自らの手で、自らの意志で、腕を伸ばす。
「オオオー」
「グオォー」
「ウォオー」
傷ついた拳で、青い豪腕を殴る。
到底、騎士とは思えぬ戦い方だ。しかし、これがアルファング騎士団。
決して折れぬ心こそ、誇り。
ガギィ
装甲が砕け、鎧が壊れようとも。
「グオォー!まだだァッ」
血が滲もうとも、
「怯むなァッ!」
ガギン
ゴギン
何度も振り上げる。
拳を振り下ろす。殴り続ける。
「誇りを見せよォォー!!」
「オオオオォオオー!!」
紫狼隊隊長の檄に一斉蜂起する。
青い豪腕が外れた。
「畳み掛けろ!」
自由を取り戻した腕で、尚も騎士達は果敢に挑む。己が身一つ、拳だけで。
「……すまなかった」
(お兄様?)
声は聞こえた。こんなに離れているのに。呟くように囁いた声は、確かに俺の耳に届いた。
「下がれと言った私は、お前達を切り捨てようとした」
(でもそれは、騎士団の安全を確保しようとしたからで)
圧倒的な相国の魔力を前に、そうするのが最善だった。
「最善ではなかった」
違う。最善だ。誰でもそうする。皆を思い、互いを思いやれば。
「お前達は我が手足だ。手足を切り捨てて、戦いは勝てん」