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妖艶な唇が、静寂の緊張の覆う広間に言の葉を紡ぐ。
「我が国の提案に許諾して下されば、特使としてこの上なき喜びにございます」
「特使、か……」
フッと息を吐いた。
「国家の代表が自ら足をお運びになられて、恐れ入る」
「代表とはとんでもございません。我が国は人材不足でして、否応なく、政務と軍部の責任者となっているだけでございます。私など国家の小間使いに過ぎません」
「相国殿の辣腕を知らぬ者はおらぬが?」
「所詮は噂。尾ひれが付いてしまったのでしょう」
「それでは噂の相国殿の提案を聞こうか」
「はい」
敬服の姿勢のまま頷く。そうして視線をわずかに上げた。
「ガルディン公国を国家としてお認め頂きたい」
ザワリ
空気がざわめいた。
冷静沈着な近衛兵達ですら、固唾を飲んだのが、ざわめきたつ空気を伝って感じる。
ガルディンは、国として誰も認めていない。
周辺国……人類の国家も。魔王に組する魔族からも。
『都崩れ』と呼ばれているほどだ……