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フフ……
小さく声は笑った。
フフフ
男の唇が吊り上げっていく。
フフフフッ
ククククッ
重ねるように、仮面の下でお兄様が笑う。
フフフフフ……
ククククク……
フフフフフフ……
クククククク……
フハハハハーッ!
クハハハハーッ!
両者が高笑いした。
「実に愉快。陛下がこれ程のユーモアをお持ちであったとは」
「お気に召して頂けたようで何よりだ」
言葉とは真逆の火花が散る。
「願わくば、陛下のご寵愛をお受けになられる御方が、陛下の愛で押し潰されぬよう」
「愛情が薄ければ、心は折れる。これまでに貴公が、あまたの心を手折っておらぬ事を願う」
お互いが笑いを止め、口許に弧を描いた。
「陛下」
先に口を開いたのは相国だった。
「人質千人を用意しました」
恭しく彼は跪いた。
「貴国へお送り致します」
「我が国に恭順するのか」
「それは陛下のご返答次第」
「聞こう」
「それでは」
深く頭を垂れた相国から、前髪が一筋、零れ落ちた。
「貴国と友好を築くべく、ガルディン公国特使として参りました」