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脱ぎ捨てた外套を、目をすがめ、男は見下ろした。
「これでよろしゅうございますか」
口許、わずかに吊り上げる。
「我が身の潔白が証明されるのであれば、全裸にもなりますが?」
「男の裸に興味ない」
「おや?」
フッと小さく息を吐く音が聞こえた。
「女達は私を脱がせたがるのですけどね」
(ちょっ)
それが何を意味しているのか、俺にも分かるッ
「哀れだな。私を脱がせたがる者はいないぞ」
「えぇ、そうでしょう。貴方様の装束を剥げば素顔を見てしまう。誰も自分の命と引き換えにしてまで、貴方様のお顔など見たくないでしょう」
「我が素顔は安くない。素顔を見せるのは、愛を誓った愛しき者のみである。私は、素顔を許したその者を生涯愛するであろう」
仮面の視線が、チラリと後ろを顧みた。
(ちょちょっ!)
俺、まだなにもっ!
「私は娼夫ではないのでな」
「私が娼夫だとでも?」
「そのような事は言っておらぬが?そう聞こえたのであらば、貴公にその自覚があるのではないか?」
お兄様、煽ってる!