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驚きを隠せない俺を、相国の姿を見たからだと思ったらしい。
「……ハーピィ、ですか?」
今は憶測だ。『イザナイ』の名前については触れない方がいいだろう。
思いきって、兵士さんに話を合わせる。実際、ハーピィについて俺もよく知らない。
「勇者様がご存知ないのも無理ございません。ハーピィは稀少種ですからね。元々数が少ない上に、人との接触はほとんどありません。目撃例も稀です」
真っ白い翼
天使かと思った。
二枚の純白の大きな翼を背中に携える。氷のようなアイスブルーの瞳。少し青みを帯びた長い髪は、後ろで一つに結っている。
美しい……
目の前の若い男が天使だと言われたら、そうだと信じてしまう。俺が今まで見てきた魔物とはまるで違った。
「ご油断召されぬよう。魔物のほとんどが長命です」
あのハーピィ……
「相国も見かけ通りの年齢ではないのですね」
「ご推察の通りです。文献によると、ハーピィの人でいう成人年齢はおよそ百歳」
若く聡明な見た目。二十代後半から、三十代半ばくらいに見えるが。
「百歳……いや」
政治の実権を握り、国の中枢を掌握している。事実上の支配者だ。
「二百歳を超えているかも知れませんね」
「えぇ。長命な分、我々よりも知恵にも策謀にも長けているでしょう」