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鎖国で情報が乏しい。何をどう警戒すればいいのか?
それすら分からぬまま……
ガツン
ガツン
ガツン
ガツン
男が一歩、歩みを進める度、居並ぶ近衛騎士団が槍の柄を床に振り下ろす。
威圧にも、男は物怖じする様子はない。
足まで覆う外套が衣擦れする。
また一歩
ガツン
また一歩
ガツン
男が面前へと歩みを進め、近づいてくる。
ガツン……
歩みが止まった。
「アルファング国王陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅう。この度は急な申し出にも関わらず、拝謁のご許可を賜りました事、恐悦至極にございます」
低い声だった。
男は跪くと、恭しく美しくお辞儀した。
「我が面前でフードは非礼である」
「おや?」
フードで隠れた口許がわずかに吊り上がった。
「国王陛下も、ご尊顔をお隠しになられていらっしゃるようですが?」
「ほう?我が素顔、見せても良いのだが?」
「これは失敬。陛下の御素顔を目にした者は死ぬ、と……我が国でも、貴国の古き慣習の話は聞いておりますので」
男は立ち上がった。
「非礼をお許し下さい」
バサリ
足元に外套が落ちた。
「お初にお目にかかります。ガルディン公国太政大臣・相国イザナイ・エル・クレハと申します」
(イザナイ!)
ハッとした。
いざない=誘い
誘う。引いては導く者。
(あの人も転生者?)
おれの名前がヒイロ=ヒーローで勇者だ。
イザナイ=民衆をいざなう政治家。
まさか、そんな。
偶然なのか?それとも……
「勇者様。あの者はハーピィです」
「あっ」
俺の隣、王剣を預かる近衛兵さんが教えてくれた。