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ガルディン
地名をとって、ガルディン公国と国名を名乗る。
だが、国交を結んでいないアルファング王国はガルディンと呼ぶ。
ガルディンは、西の最果てである。
人間の国の勢力が拮抗する土地であり、また南北に巨大なガルディン山脈の連なる高地であるため、統治するには極めて不便。
各国の情勢を踏まえて、どの国の統治下でもない空白地とする事で、均衡を保ってきた。
そんな土地に目を付けたのが、上位魔族である。
彼らはガルディンに、魔王の勢力の及ばない国を興し、ガルディン公国と名乗った。
「アルファングの立場で国と認めてはいけないのだが、ガルディンは鎖国している。情報は乏しい」
どんな魔族が支配しているのかさえ分からない。
前君主が崩御したのも、二百年以上前だという。
「全君主が死んでからだ。相国が急速に勢力を広げたのは。褒めたくないが、奴は策略家だ。頭がいい。今回の事も陽動だったのかも知れない」
ハッとした。
「シュヴァルツ!」
辺境で魔物に不穏な動きがあるって。
出立したのは今日だ。
時系列が否応にも合ってしまう。
「今、アルファングの兵力は分散している」
そんな時に現れた、相国。
「乗せられた」
「そんな事はないよ」