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「分かりました」
お兄様の判断を信じる。
今はそれが最善だ。
「ありがとう。さて……」
フッと短く息をついた。
「『都崩れ』は何人だ」
「一人です」
すぐさま兵士が答えた。
「ほう……単身乗り込んでくるとは」
少人数であろうとは予想していたが、一人?
わずか一人で暴挙を働いて、どういうつもりなんだろう。
「援軍を潜ませている気配は?」
「ありません」
ほんとうに一人なんだ。
たった一人で、城の屈強な兵士に怪我を負わせるなんて。
(上位魔族だと考えて間違いない)
「大体読めたよ。その『都崩れ』は何と名乗った?」
「はっ。『相国』と……」
「西国か」
西の最果て
アルファング王国から辺境の地と呼ばれるガルディン
「大臣だ。それもほかの大臣達、政務官を取り仕切る最高位の……
君主はいるが、傀儡だ。国の実権を握るのが相国。実質の支配者と言っていい」
耳打ちしたリッツの声は低い。
「野望のためなら何でもする。国の掌握のために、前君主を暗殺したという噂まである」
強欲の影
《マモンズシャッテン》
「俺達はその男を、そう呼んでいる」