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くちづけ……
秘技・国語辞典を使うまでもない。
口づけとは接吻である。
「ダメです!俺ッ、ファーストキスまだですから!」
「ふぁーすと?それは何でしょう?美味しいのでしょうか?」
この世界では、時々言葉が通じなくなる。
「美味しくありません、俺!」
「大丈夫でございます。勇者様を食べたりはしません。お持ち帰りするだけでございます」
「ヒェ!」
俺、キスよりももっとすごい事されちゃう。
「貴方様は私の真の主。これより私は勇者様専属バトラーでございます」
専属バトラー
それはつまり、
執事さんが、俺の専属執事!
「待って下さい。そういう事は、ちゃんと王様に相談しないと」
「は?」
ひそめた眉が、この世のものとは思えない拒絶を示す。
「関係ありません。所詮、奴は雇用主に過ぎません」
一国の君主様を奴呼ばわり〜
「金の繋がりなど仮初の契約に過ぎません。それとも勇者様はそれ程までに金が大事なのですか?」
「そんな事は……」
「でしょう!」
にっこり優雅に微笑む執事さんを前にしては頷くよりほかない。
「金に目が眩む者は、目先の利益に踊らされる愚者です。ほんとうに大切なものに気づかず、一生を無為に過ごすのですから。ヒイロ様、私は幸せです。生涯をかけて、我が忠誠を尽くすに足る尊き伴侶を得たのですから」
「ちょーッ!!」
なに言って☆
「こくごじ……」
国語辞典が開かない。
開こうとした手は捕らえられたから。
「貴方様を離しません。貴方様は私のすべて。真実の愛を捧げます。My Lord」