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「私は察しの悪い男じゃない」
仮面の下の唇が小さく微笑んだ気がした。
「『私とは結婚とは違う形で良い関係を築きたい』、そう君は言ってくれた」
た、確かに!言ったけど!
「王たる私に本心を明かすのは、さぞかし勇気が要ったろう。しかし、その本心こそが君の誠意であると感じ取ったよ。私は君の誠意に応えたいと思う」
応えないで〜!!
(……なんて言えない)
言ったら俺、今度こそ死刑だ。
それに、お兄様の優しさを傷つけたくない。
きれいごとに聞こえるかも知れないけれど。
お兄様の気持ち、否定したくないんだ。
俺を思いやってくれてるのが伝わってくるから。
(でも、それでも!)
どうやったら回避できる?
この結婚。
(あ、結婚は回避したんだ)
ならばこの愛人関係、どうやったら解消できる?
勇者が愛人関係って、どうなんだ。
しかも相手が王様って。
正確には愛人関係、成立してないし。
(けど、このままでは教科書に載せてもらえない、スキャンダラスな黒塗り勇者になってしまう)
闇堕ち勇者は聞いた事あるけど、黒塗り勇者……
王様さえ手玉にとった傾国の勇者ヒイロ
(そんな称号イヤだァァー!)
「どうしたんだい?悲しそうな顔して。君の夫になっても、お兄様は兼任するよ。君からお兄様をとったりしないから、安心おし」
「うぅ」
頭ぽんぽん
大きな手が優しく頭を撫でた。
「存分に甘えるんだよ」