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「承知した」
「その、俺の方こそ無理言って……えっ?」
いま、なんて?
「承知した、と言ったんだよ」
うそ?承知されちゃった……
「でもっ」
「どうした?君が望んだんだろう」
「そう……ですけど〜」
王族の名に傷を付けないとかそういう配慮だろうか。
それとも元々そんなに本気じゃなかった?
(だとすると、ちょっと悲しい)
いやいやいやいや!
破談になったのだから良かったじゃないか。からかわれてただけなんだ。
それとも、もしかして!
王様からの求婚を断って、王族を貶めた罪として今から求刑が宣告されるとか?
「国外追放……俺、死刑ですかッ」
「どうしたんだい?君を追放なんてしない。ずっと我が国にいてほしい。死刑なんて言語道断だ」
「だけど俺、結婚しないって言ったから」
「落ち着きなさい」
頭をぽんぽん、大きな手で優しく叩かれて、大きく一つ息をついた。
これで落ち着いたかな?
国外追放も死刑も求刑しない、ってお兄様は言ったけど。
(俺、どうなるのだろう?)
「もう一度言うが、君を国外追放にも死刑にもしない」
「はい」
「寧ろ君は度胸があって驚いた。王族に対しても物怖じしない態度は好感が持てる。やはり君は勇者だよ」
「はぁ」
嫌味を言われている……という訳ではなさそう。
でも俺、お兄様を振ったんだよ?
「愛人枠で構わないよ」
「はぁ………………えっ?」
「君がそう望むのであらば、私は進んで君の愛人になろうではないか」
エエェェエエエエーッ!?