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「ヒトの性別は雌雄で全てβ。聞き慣れなくて当然だよ」
「はぁ……」
また記号が出てきた。
(αとかβとか)
言わずと知れたギリシャ文字である。
以前の世界では星座の中で一番明るい星、二番目に明るい星といった等級を表す時に用いたけど……
「人の等級ですか」
「少し違うね。確かにかつての世において、Ωが虐げられてきた歴史が存在するが、Ωがα、βに劣っていたという事実はないよ」
また新しい記号が出てきた。
「Ω?」
「そう。君がΩになればいい」
「??」
ますます話が分からないぞ。
整理しよう。
人間は全てβらしい。
(βをΩにする?)
そもそもβって、なに?
Ωって?
αも出てきた。
βカロテン
それは栄養素だ。
じゃあ、何かの数式?
だめだ〜
頭の中がグルグルする〜
まるで理解できない。
「一足飛びに話してしまってすまないね。君が困惑するのも無理はない。一つ一つ、順を追って話すよ」
お兄様によると、
生物の性別第1性と第2性がある。
第1性が雌雄の区別。
第2性がα、β、Ωだ。
あまり知られていないが、人間以外の生物にも、この第1性と第2性があるがいるらしい。
しかし、ほぼ全ての生物の第2性がβせいであるがゆえに、人はこの第2性の存在に気づかなかった。
「先程、ヒトは全てβ性だと言ったが、実は例外もあるんだ。突然変異でα性が生まれる事がある」
私はα性だ。
……と、お兄様は言った。