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 言えないよ……


 好きは、好きじゃないなんて。



 執事さんの孤独は本当だ、きっと。


 寂しげな瞳の闇に宿った光は暖かくて、か細くて、それを俺が吹き消す事なんてできない。


 俺は勇者。未来を守る。

 誰にも平等に、当たり前にやって来る未来を守りたい。その未来は、幸せなものであってほしい。


 好きは好きじゃないけれど、好きじゃないんじゃない。

(ひっくるめて好きと言った言葉は嘘じゃない)


「執事さん!」

 愛しているじゃないけれど、好きは好きだ。

 ちゃんとしっかり伝えれば、分かってくれる筈。

「はい、勇者様」

「俺……!」


 どうして〜ッ


(俺、執事さんを呼んだだけなのに)


 執事さんの顔、赤く染まってるんだ?


(まさか)

 執事さん、ときめいてる?


 ドキドキドキドキ

 ゾクゾクゾクゾク


 脈打つ鼓動が早鐘を打つ。

 ドキドキがゾクゾクに変わった。生命の危機が膨らんだ。


「お、俺……俺は好き……」

「もちろんでございます。ヒイロ様をお慕い申しておりますよ」

 ちがっ!

「話には続きがあって」

「私もでございます。勇者様、いえ」

 一段、視線が上がった。

 抱きしめられていた体が、執事さんの腕で持ち上げられていた。


 絡んだ視線。

 闇を溶かした隻眼が見つめている。

 触れてしまえば消えてしまうような綿雪を、見つめるだけしかできないように、ただ儚く……


「言って下さい」


 バサリ


 羽ばたいた翼が空に舞う風を止めた。


(聞こう)

 聞いてあげなくちゃ。自然とそう思った。



「我が真の主」



 風が羽ばたいた。陽光にきらめいて。


「これより貴方様を真の主として、敬い崇め、我が忠誠と愛を永遠に捧げます」


 私の……


「麗しき小鳥よ」


 ぎゅうゥゥ〜


「キィヤァァー」

「囀るお声までお美しい」

 これは叫んでいるんです!

「ヒイロ様」

 艷やかな声が耳朶をくすぐった。


「誓いの口づけを受けて下さいますね」




 …………………………へ。



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