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馬車を引く馬は御者が居なくても、目的の場所まで移動する事ができる。彼らは馬車の中から時々聴こえる笑い声に、耳をピコピコと動かしつつ、宮殿に向かって歩みを進めている。馬車の中のかぐや姫達は久々に再会した親友のように陽気に酒を酌み交わしていた。
「愉しい場で相応しくない話だが、今回の会談の目的を話させてもらいたい」と閻魔大王が慎重に話を切り出した。
月の王は頷いて、閻魔大王が続けた。
「日の本に鬼が生まれたのだ、勿論数百年に一度は地上にも生まれるのだが、今回の鬼達は異端にして、強大なのである」月の王とかぐや姫は静かに、話の続きを待った。
「地上に生まれた鬼は、火山や地脈が行き交う場の岩から鬼が生まれるのだが、それらが小鬼のうちに地獄から使いを送り、地獄に招き入れていた」と閻魔大王は鬼について説明した。ここまで聴いた所でかぐや姫の顔が曇り始めた。確信はないが、何か心当たりがあるようである。
かぐや姫は閻魔大王の視線を感じたので、顔を上げると、(責めているのではない)と言っているような視線であり、姫はほっと胸を撫で下ろして次の言葉を待った。
「繰り返しになるが、今回の鬼の強大さから、既存の方法では地獄まで召喚することは能わず、使者に今回の騒動を調べさせた所、鬼が生まれたのは日の本で一番高い山で、生まれた岩からは月の神力が検出されたとの事だった」
「な…何故そのような場所で、どのような目的でそのような事を…」と月の王は困惑した表情で呟いた。
かぐや姫は「私に心当たりがございます」と観念したように口を開いた。月の王はかぐや姫が地上に遣わされていた事を思い出し、事の発端を理解した。