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月の鬼退治  作者: ペンシル カミラ
最終章 世界と螺旋
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 かぐやたちを背に乗せた紅葉は、指定された遠い宇宙の座標まで短縮移動できるよう、空間を作り出す。そして彼女たちはその空間を高速で移動している。紅葉が作り出す空間は六角のの巨大な通路であり、外の様子を眺めることもできた。後方には地球と月、前方には赫赫と燃える太陽が見えた。



「へぇ、紅葉ちゃん…乗り心地最高、良い眺め…」かぐやは目を輝かせて辺りを見渡している。彼女の付き人の黒も移動術が使えるが、速さと引き換えに、黒は他者を連れて移動することはできなかった。



「ねぇ太郎、止水が世話になったね、礼を言うよ」かぐや姫は後ろを振り向き、鬼たちと一緒におとなしく座っていた太郎に話しかけた。「光栄です。偶然居合わせただけですが、お役に立ててよかったです」太郎は申し訳なさそうに頭を下げた。


「君が彼岸たちに名前を付けたって聞いたけど、名前の由来を教えてよ」かぐやが問う。太郎は一瞬驚いたような表情を見せたが、意を決して告げた。


「彼岸は彼の炎を見た時に、彼のやさしい心と彼の寂しさを見ました。大切な人をしのぶ花が由来です。錦は他者と他者の絆を美しく織りなすもの、という願いを。白檀は彼女の気高さと状の深さから、伝説にしか聞かぬ香木、白檀を由来としました」


「名は体を為すだね、教えてくれてありがとう」


「ど、どうも」

「紅葉ちゃんは?」とかぐやが両手を口に当てて叫ぶと、かぐやたちの心に直接返事が返ってきた。

「この名前は、最も強い紅龍に引き継がれる名です。強く美しくあれ、という自戒の意味が込められています」



「へぇ…紅葉ちゃん、やっぱりすごい子なんだね、じゃあ太郎は?」



「由来はないと思いますが、私の両親は親しみを込めてこの名前を呼んでくれました。それだけで十分です」



「いい名前だね、太郎。私は光り輝く姫、過分な名前だよ」



「いや、私はすごくいい名前だと思う。たくさんの人が感動させる光、そういった願いが込められている気がするよ」


「白檀ちゃん、ありがとう。この名前が少し好きになった」






「かぐや姫様、ここか先は一気に移動しないと敵に気づかれます。その準備に時間をくださ…あれ?」



「うん?」



「私たちを追いかけて、地球から大きな地脈の力が流れてきています。その力を使えば、敵の場所まで最短距離の移動術を快適に行えましょう」



「ふーん、なんかわかったかも…」かぐや姫は少し疲れた笑みを浮かべて手で額を覆ったあと、紅葉にわかった、と伝えた。






「それでは皆さん、しっかり掴まってください」

そういうと紅葉は光を追い越し、あたりの景色を一瞬で置き去りにした。

やがて、銀河を渦潮のように飲み込む、黒く、巨大な空間が見えてきた。そして、紅葉は地球からの力と共にその空間に突入した。巨大な重力の海の底には、何もない暗闇と、あらゆる場所から吸い込まれた光が無限に広がる場所があった。静謐な世界には真空世界であり、重力もなかったが、彼らは紅葉の作り出す空間の内側にいれば問題はない。



紅葉たちが暗闇を漂っていると、暗闇の奥から強い殺意が押し寄せてきた。




「おい、彼岸…あっちに変な感じがするぜ。おれが鬼ヶ島で感じたものよりもはっきりしている」

「あぁ、燃え滾ってきたな」

「私たちでやらなきゃいけない気がするね」



「役者も条件も整った。私が指揮をとるから、続きなさい」

かぐやは語気を強めて声を張り上げ、光で作った弓矢を引き絞り放った。彼女の矢は何もない暗闇に突き刺さり、四方八方に巨大な光る竹を生じさせた。



「白檀、錦で雷雲を屋のところまで飛ばしなさい」

「おう」「錦、合わせろ」


白檀が真空の空間に高密度の濃霧を吐き出し、固定させた。そして錦は体に稲妻を生じさせ、濃霧に稲妻を放つ。そして錦は力いっぱい雄たけびを上げて濃霧を雷雲に代えた。雷雲は稲妻のごとくかぐやの矢の後を追いつく。そして雷雲は雨のように稲妻を降らせていった。何もないはずの空間で強い衝撃とうめき声が反響している。




無量は空間に満ちる闇そのものである。鬼たちの猛攻に彼は苦しみと共にある疑問が心に浮かんだ。



奴らの攻撃は自然の減少に似て異なっている。まるで俺に効くように作られたかのようではないか?

一体なぜ…?無量はその理由に気づいたが、理解したくはなかった。


あの鬼たちは俺を倒す為に、地球に作られたのだ。俺が愛した地球は、俺を抹消したいのだと。






「彼岸、矢のを中心に私たちの手前まで燃やし尽くせ!」


「太郎行くぞ」彼岸は太郎を見つめた後。両手を広げた。


「よくわからんが、彼岸頑張れ」と太郎は声援を送る。


彼岸が大きく両手を打ち鳴らすとかぐや姫の矢がある場所から、橙色の淡い色の炎の爆風が辺りを燃やし尽くした。炎は黒い塊を燃やし、無数の火の粉と共に暗闇に飛散させた。その炎は紅葉が作り出した空間をも飲み込んだが、まるで熱さを感じなかった。大鬼たちの攻撃が激しかった空間は止みそのものが灰と化していた。そして、無量の意識は無数に細分化され、やるせない気持ちと共に漂っていた。






わかったよ。もうかき乱すのはやめる。だから…せめてお前を眺めさせてくれ。

無量は静かに願った。









紅葉は真紅の目で、無量が散りゆくさまを眺めている。









「帰ろ」かぐや姫は静かに呟いた。









~~







月の宮殿前の大広間に大きな風穴があいた。そして、かぐや姫たちを乗せた紅葉が現れ、倒れるように広間に横たわった。彼女の身体何重にも蜷局を巻き体からは熱気が湯気が溢れていた。



「すみません、しばらく休みます」紅葉は念力でかぐや姫たちを広場に降ろした。



「ゆっくり休んで。紅葉ちゃんのおかげで助かったよ」





「ふふ、名誉挽回できてよかった」

彼女はかぐや姫を守り切れなかったことをずっと後悔していた。

もしも、彼岸が現れなければと思うと、生きた心地がしなかった。





「私もしばらくここにいるよ」

かぐや姫は大きく背伸びをした後、紅葉の顔の近くに寝転がった。

とても満足そうな顔で宙を眺めていた。



彼岸と太郎たちも広場で大の字になって横になる。

紅葉の熱気はあったが、冷たい月の世界のおかげで心地よくさえあった。




地上の時間で一か月後。

弥助とお蝶の家にかぐや姫は訪れた。





「ちょっと、かぐや様!遅すぎますよ!」

おばあさんの着物と割烹着を借り、畑で採れた野菜を切っていた黒がものすごい剣幕で

土間に降りてきた。



「お詫びになんだけど…これ。あとさ、黒ちゃん、今度私の弟と見合いしてくれないかな」



「これは王族用の月見団子!そして何故!?」



「私の勘が言っている…黒ちゃんは弟の好みのドはまりすると」



黒は土間に座り込んで、呆然と月見団子を口にした。

「うん、おいしい…」






「おや、姫様やっと帰ってきたね。よかったよかった」

「ほんとだよ、心配したんだから。夕飯、食べていきませんか?」



「はは、ご馳走になります」かぐやはそう言って楽しそうに笑った。





~~


月の世界、かぐや姫の屋敷にて。



「なぁ、彼岸。俺たちこのままお世話になっていいのか?」


「さぁな」


「白檀は姫様と一緒に地上にいくから留守番頼しないといけないらしいけどさ。ちと退屈だな」



「退屈なのは今だけだ。すぐに忙しくなるさ」




「太郎の奴、今日が初めて出勤する日だろ?あいつ、大丈夫かな」




「さぁな、月の宮仕えの仕事はわからん」そう言って彼岸は嬉しそうに昼寝を始めた。

彼の脳裏にはいままであった出来事が浮かんでは消えていった。彼岸は心地よい眠気に身を任せた。





月の鬼退治 完

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