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月の宮殿に通じる大広間で月の王と従者たち大きく豪奢な馬車が閻魔大王の到着を待っていた。鳳は両翼を大きく広げて降下の勢いを緩めて、着地すると、背中の閻魔大王が降りやすいように羽を閉じて地に伏せた。鳳の鞍から閻魔大王は地に降りると、背中に担いだ頑丈そうな葛籠から何か地束ねられた何かを鳳に与えて鳳を労った。
閻魔大王の身の丈は8尺を超え、漆黒の御直衣の上からでも全身の筋肉が膨れ上がり、精悍な顔に、整えられた髭は凛々しくも、雄々しい。初めて閻魔大王を観た、月の従者は地獄を統べる王はさぞ、恐ろしい外見をしているに違いないと思っていた。しかし、良い意味で彼の期待は裏切られたようである。
「長旅だったな、ここで待っていてくれ」と大王が言うと、鳳は炎のように揺らぐ金色の瞳を閉じて頭を垂れた。
月の王は閻魔大王の方に歩みを進めて、馬車に案内をした。閻魔大王は普段の純白の御直衣ではなく、月の王が引き込まれるような深い紺色の御直衣を着ていたので、少し驚いたが、良く馴染んでいると感心したようである。
「閻魔大王、宮殿まで馬車でお送りします」と月の王が言うと閻魔大王は「わざわざのお出迎えに感謝する」と礼を述べ、月の王と同じ馬車に乗り込んだ。
月の馬車は一軒家と観間違うほど大きかったが、2頭の巨大な白馬はカタカタと悠々と馬車を引いて宮殿へと向かっていった。