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月の鬼退治  作者: ペンシル カミラ
第2章 地上世界
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錦は身を屈めて洞窟から出ると、叫び声の主が崖の斜面の上の方から聴こえてきた。


「おーい、誰か、此処じゃ、助けてくれ〜」


錦は崖の隙間に手足を器用に食い込ませ、力強く登っていき、後に2人も続いた。段々と男の声が近くなっていく。



男が居るのは崖の斜面にできた、畳1畳程の窪みのような場所であった。人の足では登るのも降りるのも困難であろう。


「もう…駄目じゃ…いやいや、諦めんぞ、おお〜い、助けてくれ〜」男は懸命に助けを呼んでいたが、崖の上からの助けは来ない。



錦がよいしょ、と右手を窪みを掴み、身体を上に引っ張り上げると助けを呼ぶ男の顔が目の前にあった。2人とも予期せぬ遭遇に対し、無言でお互いを見つめ合う形となる。

「う、うわあああっ、うわぁぁぁ!」と2人の男は叫び合った。


「お、お助けを〜っ」


「はぁ、助けてやる」と錦が男に声をかけると、その男は言葉の意味を理解できていない様子で「へ?」ときょとんとしている。


「おい、お前は助けてほしいんだろ?」と錦がイライラした様子でもう一度聴き返す。


「た、助けてください」と男が懇願すると、錦は左腕で男を軽々と抱えて、崖を登り始めた。「彼岸〜、落っこちたら受け止めてくれよなー」と錦は下にいる筈の彼岸に向かって声をかける。



「それは無理な相談だな」と崖の上の方から返事が返ってきた。錦が崖の方を見ると彼岸と白檀が満面の笑みで手を降っている。


「あ?お前ら、少しは手を貸してくれたって良いじゃねぇか!」と錦が怒り声を上げると、雷鳴のように空気が揺れ、「ひぇっ」と左腕に抱えた男がビクッと硬直した。

「ほら、大きな声を出すとその人がびっくりするよ」と言ってから白檀がいたずらっぽく舌を出した。


「あ、あいつら〜!」

錦は全身に力を入れ、両足で崖の窪みを蹴ると、崖の上まで一飛びして、2人に詰め寄った。「おい、お前ら覚えておけよ!」と錦は顔を真っ赤にして訴えた。その頃、富士の頂きには青空と太陽。下を見渡せばどこまでも見通せそうな程の空気が澄んでいた。



錦は男をそっと地面に降ろして尋ねた。


「お前ら、何しに来たんだ?」



「…我らは主から鬼を見つけて、退治するよう命じられて来ました」と男は申しわけなさそうに答えた。


「鬼?俺たちのことか?」と錦が呟くと、あたりは沈黙に包まれ、誰も口を開くことはなかった。



その時を見計らったかのように、他の人間達が集まってきた。「おい、居たぞ、鬼だっ!」とガヤガヤと喧騒が段々と大きくなってきた。



「おい、お前、仲間の所に戻れ」と錦が促すと男は一礼すると、足をかばいながら、人間達の中に消えていった。そして、代わりに豪奢な鎧を着飾った男が歩み出てきた。



「あ、我こそは天下無双の剣の使い手ぇ!その首、もらい受けるぅ」と言うや否や刀に手をかけたかと思うと、一瞬で錦の目の前まで身体を前傾したまま駆け寄っていた。


「は?ちょっと待てよ」と錦が制止したが、聞く耳持たずで剣客は刀を抜きながら斬りつける。しかし、錦は何とか身を捩って居合斬りを躱した。


錦は後ろに飛びのき、人間達から距離を取ると、人間達は弓矢を番えて射ち始める。そして、何人かの剣客が刀やを槍を構えてこちらに向かって走り出す。


「〜〜〜ッ」錦は必死に言葉を探したが、こんな時に何を言えばいいのか、全く分からなかった。



その時、錦の前に禍々しく燃える火柱が剣客達の前に立ち塞がった。


彼岸は自然に流れる気を心に取り込み、炎に変えて操る事ができた。しかし、錦が知る彼の炎はもっと優しく、暖かい物であった。



彼岸が錦の前に歩み出る。

その体からは黒い煙と溶岩のように滾る炎が足元に広がっていく。


彼岸は火を撒き散らしながら剣客達に体をぶつけて彼らを蹴散らす。彼岸の身体には触れた刀は溶け落ち、富士の岩肌にふれて黒く固まっていく。しかし、剣客達の火傷は軽く、皆うめき声をあげたり、何とか立ち上がろうとしているものもいた。彼岸は太郎の事を思い出し、人間たちに情をかけていた。



彼岸は天下無双を名乗った剣客の着物の襟を掴み上げると、燃え盛るように赤い瞳で睨見つけ、そのまま地面に放り投げる。



弓を持った者たちは辺りに散開していたが、白檀が霧を吐き出し、辺り一面に濃い霧が立ち込め、弓矢を射るどころか、足元さえ観ることが出来なくなり、必死に逃げ道を探しているようだった。



彼岸たちはやるせない気持ちで、崖を下りて人間たちから離れていった

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