第6話 スライムの憤怒とゴーストの笑顔
(火の粉………)
ゴーストAは灰になった火の粉たちにそっと手をあわせる。スライムたちの情けない泣き声が耳に入る。やがて、すすり泣くようにしていたスライムは徐々に落ちついてきた。
『…感傷に浸る時間はないよ。早く中層部に報告しよう』
『でも…どうやって?』
『…ゴースト、お願い』
『分かった』
先程の声とは違い、ゴーストA・B供に冷静な声。ゴーストBはロウソクを円形に並べていく。
『ゴースト…』
スライムたちがゴーストAを呼ぶ。
『…言いたいことは分かる。』
『………スライム、お前らはさ』
押しこめてきた感情と言葉が、喉から溢れ出てくる。
『マッッッッッジでムカつくンだよ!』
『はぁぁぁぁぁ?なに恰好つけてんのぉ?お前らは魔物だろ?蘇生されるだろ?生き返るだろぉ?』
『お前らの!せいで!こっちは!天使様に!事情説明!しなきゃ!いけないの!』
『天使様って!すぐキレるし!タバコ臭いし!何より怖いし!愚痴吐かれるし!』
『『そして怖いし!!!!!!!!!!!!!』』
『あーもぅやだ!もーやだ!』
『お前らの蘇生にいくらかかると思ってんの?天使様は!天使の癖に!金取るから!』
『集団で死ぬなよ!めッッッッちゃくちゃ金かかるだろ!スライム一匹くらいならまださ!まださ!4人(?)で割り勘したら何とかなったのに!お前ら何十匹いんだよ!フザケンナぁ!』
『【最上階にて侵入者、】ってさ!【、】要らないだろ!【、】さえ無ければ死ななかったダロ!なんだよ【、】って!』
『せめて!せめて!アイテムドロップぐらいしてから死ねよ!なに勝手に死んでんだ!』
『そんなに嫌なら逃げればいいじゃん』
ゴーストBが五芒星を描きながら言う。
『逃げる?はっ!オレらが?天使様から?無理に決まってんだろ!』
『蘇生なんて頼んでないっていうとさ、俺らのこと殺して!蘇らせて!そんで、「頼んでねぇか」つって!また殺してくんの!怖ぇぇよ!サイコ!』
『しかも!ぼったくり価格で!運送費が高すぎんだよ!』
『いやさ!蘇生魔術って魔神様しか!使用許可!でてないから!蘇生業務が!混雑するのは!分かる!オレらでも分かる!天使様は!蘇生できるけど!使用許可がないから!蘇生しないのも!分かる!でもさ!でもさ!運送費であれほど請求するのはクソじゃない?ゴミじゃない?』
『タイヘンだねぇ~』
ゴーストBが赤いドロッとした液体を五芒星に流しながら言う。
『おいゴースト!なに他人ごとみたいに言ってんだ!』
『だって実際他人事だから、ゴースト』
『はい、』
ゴーストAがゴーストBに火をつけたロウソクを手渡す。
『まぁ、天使様なら法外な金額は要求するだろうね』
淡々とした口調でゴーストたちは言う。
『お前らやけに落ちついて……?そいや、一角兎ってどこ行った?報告書を運んでもらいたいんだけど』
『一角兎なら中層に逃げたよ。近未来視であんたたちが天使様にしばかれるのを視たんだって』
『…………は?』
『え…は?』
呆気にとられたスライムを気にもとめずゴーストたちはロウソクに灯をつける。
『じゃあ、値下げ交渉、頑張ってね(^^)/』
『バイバイ(^-^)/~~』
ゴーストたちは笑顔で手を振る。
『せーのっ』
『『 【転移】!』』
ビュンッ…………………………
人(?)物紹介
ゴーストA
区別のためにAと名乗っているだけの名無し。いつも冷静で理系。丸眼鏡をかけている。ゴーストBと仲が良い。スライムよりは強い。一人称【僕】
ゴーストB
区別のためにBと名乗っているだけの名無し。普通系女子で文系。ゴーストAと仲が良い。スライムよりは強い。一人称【私】
スライム(A)
聖女にブン殴られた奴。口が悪いが根は悪くない。金はそこそこにある。
スライム(B)・(C)
万年金欠。いつもゴーストたちの被害を受ける。苦労キャラ。