個別学習 (tutorial)
少女期の終わり(End of virginity)
「は?今なんておっしゃいました?」簑笠府イリスは親友の暴言を咎めて声を荒らげた。
「……コウ君と、お付き合いすることになりました」四ノ原早紀は新事実を端的に述べた。
「そういう事じゃありません。彼が誰と付き合おうと構わないのですが、幸せなら。しかし、この尾張国に訪れている終わりは碌な事にならないのは貴女の言ではないですか?」
「"彼"には、あまり"関係がない"ので、夢の終わりとして異能とされたモノを全て放逐することにしました。我らの旧家は"生き延びる訳にはいかない"という結論でした」
「……ッ!私と貴女の同盟は、十二奥家の存在を、確約するものでは?前提として!」
「……イリス。正直、貴女がアレを本気で望んでいる、とは言い難いのですが、本気であの終わりを飲み込んでいるの?イリス?」早紀は言った。イリスの正気を問うものであった。
「……勿論正気を問われるとは思いましたが、これが一番生温い終わりでしょう。これがHappy Endという事です。終わりを避けられない、どれを残すか?これしか有りません」
「……本当に?あの人類が存亡を掛けて戦った結末がアレでは。人の尊厳を奪った因習家の、傲慢が肥え太ったかのような、知恵無き終わりが?本当にマシだと?」
二人はこの言葉を境に交友が途絶えた。四ノ原早紀は自身の正しさを信じ、簑笠府イリスは己の判断を疑いながらも比較し、マシなものを辛うじて見出した、という風体であった。
Happy End。それはメリーバッド、ハッピーエンド。人類の終わり方を選んで存続を選ぶと現れる結末であった。
DreamEnd。夢オチ、とされる現状文明の存続を四ノ原早紀は選んだ。犠牲は避けられないが最大多数の幸福を選び取った結末が、因習の原因となった力の消滅、それこそがめでたしめでたしである。
しかし、それは最初の犠牲として片付けられる者にとっては最悪の終わりである。彼、彼女にとってそんな終わりは絶対に許されない物である。
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違なる時間、違なる歴史(Different history, different time)
「聞いていいですか?ザッハーク」新庄幸人、違う世界の住人はザッハークという蛇を自称する女に聞いた。
「はい、何でも良いですよ」しかし、ザッハーク何某はご機嫌であった。太っ腹で疑問に答える感じだ。
「誰かの歴史対策を、時系列を無視して、事件は起きていると聞いた。ならこれを理解できるというのは傲慢ではないか?」と。新庄幸人の疑問は最もである。
「そうですね、幸人さんは此の事件の真の黒幕と相対して、殺傷至らしめるのが目的ですから、別の人物殺害、などという結末は避けたい、これは理解出来ます。ですが」
「我々も、そんな難解なクイズを出して満足している訳ではないです。単純化と奥深さ、歴史改変の約束事ルールとしては"自分たちが黒幕ではない"ので、解き明かされるのを待っているので、それをする必要性は皆無と言えます」
「単純化……具体的には?」
「そうですね、十二奥家という存在を悪用する者には、その存在が疎ましい存在には対策を打ちますが、方法論が分かり安いもの、という風にルールを敷きました、これを信用して頂きたいと、我らは思っています。例えば、ジャン拳のような三竦みと言えば分かり安いかと」
「ジャン拳、蛙、蛇、蛞蝓みたいなものですか?」
「はい、そうです。ですがジャン拳のような、であり本当のじゃんけんでは有りませんから、相克が起き続けた際に既に強いた手段がまっさらにはなりません。そうですね例えば初手グーに対して、2手目のパー、そして返しにチョキ、として直前に相手の出した手しか記憶に残りません。ですが仮定についてはその限りでは有りません」
「相手の手筋が読める?」
「はい、そして此のゲームは1手を封じ手、残り5手の限定ジャンケンとした場合、手札に何を遺して置くか?という読み合いと乱数のゲームになります。幸人さんには理解りますか?」
「6手分の手札から5手、じゃんけんは通常三竦み。だから3の倍数しか初手の配分は3種の手を均等にするか、もしくは初手で偏らせるか?というまた三種の三竦みが発生する?GGCCPPとGGCPPPでC、つまりはチョキを封じ手にした場合確率はともかく、パーの価値が肥大する、とか?」
「正解です。此の場合、4つの終わりに対して、どの終わりを残すか決めるか?でプレイヤーは誰と協力できるか?が変わってきます」
「簑笠府家のイリスちゃんと、四ノ原の早紀さんは協力できないってこと?」と幸人が言うと、ザッハークは首肯してみせた。
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「何故、御二人が協力関係に成らないのか?理解りますか?」
「二人は対立するプレイヤーではなく、此の世界を記述する法理だからだと聞きました。いわゆる四位一体であり、全ての条件を満たすのは不可能、もしくは一つのみを満たす災厄だとか」
「はい。首を残せというのは、全ての頚を落とす、それこそが怪物の正体だからです。トリレンマならぬ、四位一体。3つまでは共存可能、残り一つは絶対に不可能、としないと永遠に全ての問題の解法を探求して、永遠に燃やし尽くす災厄。
そこに存在しうる唯一の至宝、三都首の龍、アジ・ダハーカ。それが貴方。私の友宝。だからこそ"また"友人に成るのは防ぎたい、ですが此の世界の住人が異を唱え貴方を此の世界に留めると宣言された。
私はそれを疑いつつも言葉を発したのは此の世界だとして信じて待つことにしました。ですが、この苦戦具合も想定範囲内でしたが」
「でしたが?」
「音を上げずに頑張ってますね、ということで幸人さんも耐えているようです。ならばかつての友としてはその判断を尊重しましょう。それで何かご質問は有りませんか?」
「……音を上げてないのは一体誰の事なのですか?」
「……さあ、この事件の黒幕は、未だに理解ってない模様。"彼に"教えて上げる必要はありませんね」
「……僕も、この対戦の相手が理解ってないけど」
「新庄さんは理解らぬとしても無理有りませんね。色々と貴方の前提と事態は変貌しています」
「その変貌というのが理解らない」
「もっと具体的に言うと?」
「グーとかチョキというのが曖昧模糊としており分からない」
「とても簡単ですね。この事件はクアドラレンマの歴史を舞台として居ます、故に構成要素がそのままジャンケンに対応します。グーとかチョキとか、しかし四位一体となると?」
「そうか、そういう事か。3すくみではなく、4すくみと成るわけだ」
「はい、そのとおりですがこの場合"時間切れ"が4番目の手となります。ジャンケンとの違いはその相違点がそのまま適用されるわけです。敵プレイヤーは此処まで"出さない"事で外部に居ながらこの盤面を支配しつつあります」
「……それが異能ならぬ、異脳の効果。知性場という放置プレイが強いんだ……」
「仰るとおり、新庄君のご指摘どおりです。異能を扱う手練であったはずの四ノ原家、簑笠府家、真行院家と言えど、真なる天敵を前に苦戦を強いられていることですね。イリスさんも此処までは読めていませんね」
「……なあ、その放置プレイ野郎に反撃したいんだけど、どうしたら良い?どうしたら参加表を投じられる?」
「……何を言っているのやら?良いですか相手はこのゲームに参加したいのですが、仕方なく無効票というサボタージュに掛かりっきりなのです。つまり?」
「もしかして、このまま耐えたら敵さんは自滅しちゃう?」
「控えめに言って、ですね。これには味方の協力者も冷や汗モノですよ。ヤバいのは、貴方方も行き過ぎて自滅しちゃうのがこの"偶塔の怪物(Monster of Even Tow)"の恐ろしいところですね。
では、説明のためにも仮想対戦してみましょうか?私が敵側のテストプレイヤーになります。新庄君は他のプレイヤーをお願いしますね」と言ってザッハークはトランプのデッキを持ち出して山札をシャッフルして配る。
幸人の手札:スペードとクラブとダイヤはそれぞれがGCPに対応、そしてハートのカード。これは手札からの供出無し、意思表示のみというカードだ。
ザッハークの手札:ハートのみ手札に在るが、これをブラフとするために手札を持っているかのように見える、そう見えるために手札から毎ターン供出する振りをが、実際にはハートなので何も減ってない、と言う事になる。
「これってどうなるんだ?」
「手札=ライフです。これがゼロに成るとプレイヤーは力尽きて終わりです。ですがハートしか手札にないプライヤーは積むので手札を出す、様子のみ他のプレイヤーは知ることしか出来ません」
「なるほど、他の奴らには手札を出させて、自分だけは手札の損耗無しに他のプレイヤーを出し抜けるわけか。ん?ちょっと待って。これ他のプレイヤーの場を荒らすしか出来なく無いか?他のやつが成果を得たのは手を拱いて見ることに?そいつは勝てるという確約の保証もないとしか思えない」
「概ね、正解ですね。ですが、シチュエーション的には最悪の結末、全ての頭が落とされる、そんな結末に向けて突き進んでさえ居ます。イリスさんを信じてない幸人君、そしてそれを疑い始めているイリスちゃん。そして早紀ちゃんこと鏖殺ちゃん。それを拱いて眺めてしまった黒幕。では対戦相手は誰なのか?これがこのゲームの、最悪の結末を避ける唯一の手法ですね」
「そんなのは一人だけしか無い。秩序を反したら得られる異能、そんな秩序と法において最大の悪事を働いたものが一人だけ居る」
「その一人とは?」
「荒井耕造。僕を殺害した男の名だ。こいつが何故力を7枠以上も抑えているのか?ということをきちんともっと熟考して考えるべきだった」
「正解です。彼もまだ、自身の兄妹のために参戦しているプレイヤーです」




