???(再生シーン3)
誰も居ない病室に少年が寝ている。それを見舞っている少女が一人。少女の見目麗しい見た目と引き換えに少年の容貌は微妙である。
だが、少女の少年を眺める視線にはそれとは違う熱量が籠もっていると言えた。
「僕は、いや俺はどうしました?そして君は誰?」新庄幸人は部屋の同居人に訪ねた。
「ん~~~♪どう応えたものですかね?そして思ったより貴方様が元気でなによりです。新庄君♪」
「……真面目に答えないタイプか、俺は何かと戦っていた気がする……まさかと思うが貴女に?」
「違いますね。私達アジ・ダハーカ、いえ六大魔とは、本来貴男のような人間と敵対する役割を担う存在でした。そう云う意味では貴男の言う通りなのですが……」少女はうふふ、と微笑んで言った。
彼女の言葉の意味とは裏腹にその態度に悪意も邪意を微塵も感じない。
むしろ、彼女の視線には今まで感じたことのないレベルで温もりさえ感じる。己を強く持たねば勘違いしそうである。
「"私達は強すぎました"。誰も我らの前に勝利の人物と成れませんでした。それとは逆の意味でLast manになっちゃったわけです」
「……君は、君たちは一体何ですか?善なるもの、真理の人なのですか?」
「……そう見えるのは意図したものではないですが誤解です。我々は"光り輝く悪の殿堂"と言うべき存在。では悪の殿堂入りした邪悪者は目の前の生命を鏖殺する存在でしょうか?」
「確かに、木っ端存在の悪人なら、考えもせず殺したりするかもしれませんが……」
「では!その道の極めしものはどう振る舞う存在でしょうか?」少女はこちらに向かって我が意を得たり、と言わんばかりに体を乗り出してきて続きの言葉を待っている。
「……殺さない。生かしておく。でもそれでは、悪党と言えるのか?」幸人は道を極めた"悪党"という存在に注意を取られる。真面目に考えなかった方向の存在が"悪の殿堂入り"であった。
眼の前に居る悪党は強すぎると言っている。実際に余裕を感じている様子が在るが隙を晒している様にも見えない。
つまり、何時でも殺せる。生殺与奪の権利を持っている。持っているとどうなる?最高のタイミングで殺すのだ。だが、誰も生き残れない、生き残ってないという。
ならば、何時でも殺せるなら、刈り取れるなら、実りの季節を待つのである。そういう事なのだ。機を伺っている、更に言えば種を探しているとも言える。
「鍛え、育てたい。生まれるのを待っている、貴方方に比肩しうる存在を殺さないのはその為に?」
「……正解です♪なので、貴男が我々に参加するような流れは来ないと良いなあって思ってます。故に私はそんな存在を"幻想存在"と呼んでいます。では見事正解して此処まで来た新庄君に問います」
「貴男を負かした存在に向ける貴男の戦意は、今も健在ですか?」と不敵な視線で少女は幸人に問う、此処まで舐められて、その靴を舐めるのか?継戦の意識は在るのか?と。
「"指が付いていれば"、目が覚めて直ぐにでも何か得物を手に取ったでしょう」と幸人は言う。
「"付いてますよ"、じゃあどうするんですか?」
「え?」と我が手を見る、となにかに引きずられて削り取られたらしき利き腕の指が欠けることなく、全部付いている。声にならない呼吸がひゅう、と喉を鳴らした。あからさまな人知を超えた権能、みたいなのを垣間見た。
「はい、林檎です。どうぞ」と少女は幸人の口に皮を剥いた林檎を突っ込んできた。甘くて美味しい。飲み込んでも特に異常はない。毒殺などしないだろう、悪の殿堂は。ならば、どう殺すのか?決まっている。
「美味しいですね、林檎。獲物を取ると言いましたが忘れてください。まずは」と幸人は素直に感想を述べた。
「まずは?」
「栄養補給の、腹を満たすのがやるべきでしょう」
「はい、正解です。とにかく姿勢はともかく、敵対存在に対してどうしますか?」
「戦います。力量差はともかく、自身の手でそれを為したい」
「まあまあ、どうしたものでしょうかね?部長、彼も承知のようです」と少女が言うと病室の外から人が入ってくる。
「幻想存在だと彼も消えちゃいそうだね。なので幻想ちゃんは彼女だけの肩書になりそうだね」と何某と後に呼ばれる存在はそう言った。
「とりあえず、意思の確認を取ろうか?君は我々に参加するつもりはないかね?」
「ないです。多分参加したほうがコスパ良さそうですが、どうでもよくなって忘れてしまいそうだ」
「宜しい、これにて此の世界を滅ぼすのは一旦据え置きにしておこう」




