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異能生産(Dehumanize)  作者: 赤石学
89/101

???(再生シーン1)



「いい話だなぁ、相手が鏖殺ちゃんでさえなければ」との言はこの歴史では本当の佐爾波鏡子である、ザッハークは新庄幸人と四ノ原早紀との馴れ初めを一通り聞いてそれに対して素直に感想を述べた。

「……なんで話さなきゃいけなかったんですかね?」と、新庄幸人は顔を顰めながら吐き出す。


そして、さらに娘の想い人が未だに他の女に懸想していると知っていた簑笠府卿碁きょうごも新庄幸人とは別の意味で口の端を歪めていた。

前者は一番重い思い出を引き出されて、後者は一番重い所に自身の一番重い者が居ないことに対して、だ。


「新庄君、私がこういうのも何なんだけど、君は今からでもパートナーを変えるべきだと思うよ」ザッハークは部外者の意見として、軽い気持ちで貞操概念のそれとして最低なことを言う。

「それは、今からイリスを捨てて、四ノ原さんを取れと?」幸人は当然反論したが。


「極端だなあ、鏖殺ちゃんと幻想ちゃん、二人共に『お前が一番に決まってるだろ』と言いながら、キープくらいやってみせろってことですよ」そりゃそうだ、と言わんばかりのザッハーク。

「吐き気がする。そんな事を由とする自分自身に、だ。僕の話を聞いていない?」幸人は不満をこぼす。


「お言葉だが、新庄君。君が今娘を手許に置いておくのと、此処で四ノ原君を選ばない理由に差があるのかね?」簑笠府卿碁は幻想ちゃんの父親としての当然の事を言った。まあ、流石は十二奥家の当主だけは有る。とザッハークは思った。

「そうだね~、君の話では君は"君の生き方を自身で停められないし、止める存在を赦さない"。そう、鏖殺するが如くだ」ザッハークは言った。言ってしまった、新庄幸人の本質を包み隠さずに口にしたのである。


簑笠府イリスが何故幻想ちゃんで、彼女が何故その名を冠されているかはわからない。

四ノ原早紀が鏖殺ちゃんの名を冠せられたのは、恐らくは僕だけ、つまるところは新庄幸人だけが理解し分かる話だ。

今以上に彼女には近づけない。今なら親友の恋人、というポジションで済む話、はな……しの、はずでは?

事情が変わったことを、逆に見た時に、親友の悩みが、その原因の彼女が何故変節したのか?理解出来そうになったのである。


「意図したことを理解して何よりですよ、新庄君。君はどうしてそう、本当は敏いのに、愚かで鈍いフリをするのですかね?そうですよ、既に君の友人は鏖殺ちゃんを受け入れられなく成っている。

では誰がそれを、その想いを受け止め引き受けるのか?候補はもう殆ど居ませんよ?」ザッハークはまるで何某の様にニヤニヤ笑いから横から心臓を射止めるかのような針のような視線で幸人を射竦める。

「そうだね、何某さんに師事した4人の少年少女の内、荒井耕造君は相応しくないとして脱落、真行院幹雄君は、残った3人の内に居た競争者の中に、探していた妹君とは四ノ原早紀、その人だった。

こうして彼も倫理的に選べなく成っている。となれば誰がどうにかすれば良いのか?となる」


「あああああ。そういうことなのか!?」ダァンと椅子を叩く幸人。幹雄は早紀との婚約を自身の異能アビリティー異片鑑定(judgment)で明らかにしてしまっていた。


しかし、それは隠されていた秘密を解き明かしたのだろうか?それは因果が逆なのでは?という話ではないだろうか?


荒井耕造は幸人自身を亡き者にしようとしたので、法治国家にはあるまじき存在として反社会的な組織が自浄機能として彼を断罪した。

それにより、何某の選んだ4人の荒井、真行院の二人の男子は、一人は消えて残りの一人はもう一人の女子との血縁関係が明らかになった。

最後の4人目が簑笠府イリスであり、浮いてしまっている。関係性として友人関係では有るが、その絆に倫理や道徳、良識は本当に乗るのだろうか?


そうは思えない。


そもそもイリスとは4人の中では1人きりの仲間外れだった、ただのランダムで異能アビリティーを得た幸人と一夜限りの関係を結んだ、で終わる筈だったのだ。

だが逆に、此処で彼女を受け入れた新庄幸人が居たせいで、このまま行けばイリスの一人勝ちが生まれた歴史の世界(Dead End)に対抗するべく、四ノ原早紀か、真行院幹雄が動いては居ないだろうか?


「ザッハークさん、質問をしていいですか?」

「構いません、どうぞ。新庄幸人君。卿碁君はしばらく大人しくしていただきたい」とザッハークと言う名の女は、この世界の住人の佐爾波鏡子という存在に移り変わったかの様に挑発的な表情を消して居る。


「イリス、もしくは何某さんと、僕との出会い以降に時系列順に何が起きているか?を確認もしくは訪ねたいのですがこの行為を咎められますか?」幸人は訪ねた。要は未来情報を知りたい、もしくは伝えたいとの同義である。

「この世界の歴史を推し進めているモノとして、新庄君の主観においてそれは時系列順である、という制約範囲内であれば、何が起きているのか?という話し合い、話題として扱ってもらって結構です」と佐爾波鏡子(ザッハーク)は言った。


話にならない。というか幸人のその疑問には向こうの想定通りだったと言わんばかりの返答であった。

多分、イリスや何某とは、新庄幸人の主観とは逆方向の何かが在るのであろう。それどころか、真行院幹雄や、四ノ原早紀も。更に更に言えば荒井耕造、新庄幸人を殺した張本人すら何かの未来での出来事(Dead End)による行動ではないだろうか?


極端な殺人行為、更にはそれへの応報としてのさらなる殺人。此等にはきちんとした意思決定のための、会議などが存在したのでは?という疑問である。


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