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異能生産(Dehumanize)  作者: 赤石学
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DeadEnd承前?


「クソ、つまらない。設定が安易、命名が凝り過ぎ。そんな時間有るなら推敲と誤字脱字の校正をすべき」四ノ原早紀は先日気まぐれで助けた少年の書いた小説らしきものを読んで感想を言った。

「ごもっともで」新庄幸人はなんでこんな事になったんだ、と思いながら忌憚のない意見に殺されかけていた。


「でも、この勢いは大事ですよね。私が書いてと言って取り掛かったのは何分、何時間ぐらい?」早紀は作業時間を問うてきた

「3分ぐらい?20分は勢いが良くて、そのままオチが思いつかず、だらだらと文字数が増えていって、そんな感じです」


「まあ、この勢いでこの文字数は圧巻よね。そこは大したものだわ、私既にもう読む本がないのよね。では続きを後日書いて戴ける?」

「え、それ短編完結なんだけど」幸人は無理くり捻り出したクソの様な文章の続きを促されて困った。


「産みの苦しみってやつよ。まあこれは堆肥みたいなものだけど」

「ええ、傍若無人すぎる……確かにそうだけど。じゃあ四ノ原さんは図書館とかにはいってないの?」


「もう、図書館は読破済みよね。此処まで来ると表題で中身が類推できてしまって、読むまでもなく読破しちゃうのよ。だからもう無名の作者の本とかでない限りテキストを接種できないの。この苦しみは理解ります?」

「すいません、理解りません。物理学のコーナーは読破したんですが、戦争論とかはもう本当に不毛なので」


「へえ!理解ってるじゃない!そう、この国の軍事の脳味噌お花畑には参ったわ!もうね、司書がどういう性格なのか?ってプロファイルできそうなのよね、彼処のコーナって!」ビブリオフィリアは同士を見つけたと言わんばかりに目を輝かせて乗ってきた。熱が怖い。

「まあ、戦争が『コストが一番悪い』からこそ、『悪』なのであって、人が死ぬのが可愛そうで終わってることを延々と、胡乱な表現で書いている本が多くて、かと言って名著がないわけでもなくて、しかし革新的な戦争論とか、後数年は出てきませんよね」幸人も結構な読書家であった。このビブリオフィリアと比較にはならないが。


「ふんふん、なるほど。新庄君はそういう解釈なわけね。でも今回の異片追放(ストレンジスコン)ってのは興味深いわ。話は詰まらないけど!設定自体は興味深いわね。この汚染に塗れた世界が、実は化学的、そして放射線的な環境は全くの浄化された世界で、でも模倣子汚染と言う事で深刻な終わりの世界があって。

そこで彼らの男だけの世界に、外の世界からヒロインがやってくる。てっきり複数の女性が一人の男を巡るハーレム物が来そうだと思ってたわ!どうしてそうしなかったの?」

「いや、なんというか宇宙の誕生に、既存のありがちなインフレーション世界だとして、どうしてコギト・エルゴ・スムみたいな意志が発生する化学反応まで到達するのか?と言う疑問があって、そこから単数形ではなく、cogitare(衆我)みたいな、雲みたいな意志の発生だと面白いかなって」


「へえ、どうして君はそう思うの?」四ノ原早紀の顔は笑みを称えていたが目は一切嘲笑っていない。真剣すら有る。

「例えば、イジメって固定された役割じゃないですか?一番下層の人間が消えたら、解決しない、2番めの奴が標的になったりする。一番上が消えてもそれを受け継ぐみたいな。こういうのって何処でも有るし、人間にだけ備わってないし、動物みたいな本能だけの生物にもそれは有るわけで、これはもう考えて生きている存在に普遍的な物としたら、とまあ考えてまして」幸人の答えはどう響いたかはしらないが、四ノ原早紀はその回答に満足していた。


「へえ、じゃあまるでそれはゾンビだね?」

「ゾンビ?ある意味哲学的ゾンビと言えそうですね。みんな悪意だったり、強さと弱者から生まれるものと思いきや、肉体の檻すら関係なくて、良いなこれ。なんかこれで書けそうになってきた!」幸人は興奮しながら既に脳内は創作モードで四ノ原早紀を見ていない。



四ノ原早紀はそれをじっと見ていた。

一足飛びに、結論へ至る。これは哲学的ゾンビの知性活動ではありえない。彼が今さっき言ったcogitare(衆我)において、知性とは愚かしいもので、回りくどく正解から遠回りするものだからだ。

彼の作品は、面白くないが書かれていたものは、幾つか十二奥家という忌まわしい呪われた因習の旧家の人間において、目過ごせないものを多分に含んでいた。


この新庄幸人という少年は、まさかと思うが私に匹敵する"自我"の持ち主なのだろうか?

そして、それを虐げる、四ノ原早紀と同じ世界の真実を知る、荒井幸三あらいこうぞうがこの少年に虐げる形で執着しているかのように見える。


これを契機に、四ノ原早紀は自然な形で、新庄幸人と交友を深めることになった。


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