対戦フォーマット『虚無(BadEnd)』2
「イリスちゃん質問いいかな?」
「幸人さん、私の発言に何か気になる点が在りましたか?」
「軌道エレベーター、それと十二奥家の虚無派。それらの事実はまるで『この世界では大戦争以来、戦争が起きていない』と言った感じに近い。イリスちゃんは既に僕の携帯端末の辞書の歴史辞典を読了済だよね?何故だろうか?」
「……なるほど。幸人さんは、真行院幹雄くんと山乃原、沖ノ島くんらと、交友が在りましたよね?そこではこの歴史との違いは一切感じませんでしたか?」イリスは問い返した。
「……ミッキーらとは単純にゲームを通じて交友が生まれたくらい程度だし。歴史観についての食い違いを知る話題は無かった、かも知れない」
「ですが、幸人さんは作家志望ですよね?歴史観について食い違いを感じるそんな話題をした相手は本当に幸人さんには一切居ませんか?」
「……そういえば、母と、僕が作家志望と知って四ノ原早紀さんからウィジャ盤の作成を頼まれた時に"旧陸軍の実験施設の犠牲者"という設定で、文面を作成をしたのを話したはず、と思う」
「幸人さん、其処ですよ。御母堂と、早紀さん。他には?本当に居ませんか?」
「荒井耕造、僕を殺したとされる彼には僕の創作ネタノートを取り上げられた事があった。この時にミッキーが取り返してくれたんだけど、ミッキーは中身をチラ見しただけ、と言っていた筈」
「幹雄くんは何と言っていましたか?一言一句正確に話せませんか?」
「えーと、『僕は、何が書いてあるのか、分からなかったけど、此れは創作?』『うん、そういうのを将来書ける仕事で書きたい』と言ったはず」
「……それは、困りましたね。その3人と私含めて、全員何某さんの弟子、今の4つの塔の終わりを巡る異能戦争でプレイヤーとなるべく鍛えられた者たち全員に幸人さんが異なる歴史の跨いできた、ってのがバレてる可能性がありますね」とイリスはますます苦い顔になって言った。
「え?じゃあ、みんな僕が第二次世界大戦を経験した歴史を生きてた、って理解ってて付き合ってくれていた、と?」
「私は違いますけどね。後からそれを知りましたが」イリスは言う。
「多分、幸人さんの感覚は正しいです。先日の異能生産の盗用と流用。此処で敵はまさかの異能生産自体を複数作って奪いました。その時点では幸人さんが用無し、もしくは役目を終えたのに何故か、そのまま放置しました。そして先日の幸人さんの誘拐。此処でも無事返されました。ですが何故幸人さんが無事手放されたのか?がハッキリしましたねそれが」
「君の言う、『天地逆転』だね?」
「はい、私の研究していた相対性知性場理論、のにおいて知性場をほぼ観測者として、幸人さんと、貴方の所持しているスマホの情報は、私の研究成果を実証している唯一の端末、と言えます。そして観測者が物理的座標を移動することに因る、知性場と、異能の条件設定が、連動していると把握した上での活動だったのでしょう。要は私らは踊らされたわけです。何某さんによって」
「僕が、君と時差の有る場所に飛ばされた。君との契約を日付変更前に行わなければいけない。そして僕が持っている筈の異能生産の過酷なノルマを熟す機会を伺っていたと。上手くやれば君の無敵は攻略不能、そして僕は実は生きているだけで世界に明かりを灯すかのように利益をもたらす君にとってアキレス腱でも有ると理解っていたんだろうね」
「はい、ですので活動拠点と、観測地点の確保。此処までは十二奥家も既存の勢力が一致団結する歴史の分岐点です。此処で初めて幸人さんは"十二奥家の虚無派"を知りました。此れは恐らくDeadEndとBadEndを入れ替えさせたせいでしょうね」
「確かに。僕たちはDeadEndは新年、年末に来ると託宣で予め知っていた。此れを知っているのは早紀さんや、ミッキー。そして佐爾波家の何某さんもだね。でも旧正月が重視される、いわゆる知性場に僕を巻き込んだ訳だ。此れによって僕らの勝利条件である新年にDeadEndが来るとして準備していたのが白紙になっちゃった、当に天地をひっくり返したと言えるね」
「三都首の確保は、私が十二奥家の保守派、不動天宗家が主導権を握っていて、最大勢力と思い違いさせられました。この時点で虚無派は存在し得ません。
なぜなら、これらの都市を確保したのは、日本の正月の重要性と、アジア圏の旧正月に重要度の差異を利用したトリックだったわけです。
故に"虚無派"、この勢力は因習の家系そのものを破壊するような、ならず者を連中を捨て置いた、と言うのが世界の、いえ人間の記憶の整合性に因る修正、なのでしょうね。
実際には幸人さんがそれを何処かで観測した、その結果十二奥家の名家の私が」知っているのに知らないのは有りえませんから、気にも留めなかった、と私は今解釈した、これが幸人さんの観測した結果こそが真相。
それを十二奥家も把握しちゃった、というか私の与太の卒論研究を頭の硬い彼らが本気で信じてしまってしまったのが本当に有り得ない!保守派と改革派、その両方の過激な思想の武断派、その間で上手く立ち回って漁夫の利を狙えば勝ち抜けていたんですよ!!そうしたら幸人さんとのラブラブエッチもする暇も出来るというものですよ!!絶望しました!」
「最後の一文がなければ、傾聴したか違ったと思っていたのに」幸人は心底ブレないイリスに嘆息した。




