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異能生産(Dehumanize)  作者: 赤石学
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バッド・エンド&ワールドデッド・エンド


バッド・エンド&ワールドデッド・エンド



「取り敢えずね、○○○ってのは廃盤にしようと思っているんだよねえ」と佐爾波家の当主、鏡子と社会的身分にはそうされている怪人物が宣った。

「は?」簑笠府イリスはその怪人物の発言内容を理解できなかった。否、理解できたが合理性がないと直感的に思ってしまったのだ。


「それでは、成り立たないではないですか」?とその先を言う前に制して言われてしまう。

「今更何を言っているんだ」と。鏡子、最近は専ら佐爾波家の仕事をしていないので、佐爾波ではない、何者でもないもの、何某なにがしさんと呼べと言ってくる者が嘲笑するように言う。


「ボクはコトの最初からこの世界を滅ぼすと言っていたじゃないか。それを真行院君や、四ノ原早紀、荒井耕造が嫌だと言うから、こうして勝ち目の有るゲームにボクの世界破壊計画を修正したんじゃあないか?なあ、簑笠府イリス君?いや幻想ちゃんは理解っていたはずだよね?」そうである。このモノはこの世界が気に食わないのだと。最初から隠さずに言っていた。

「……ではわたし達の抵抗は無駄だということですか?」幻想ちゃんはそう云う事で一杯だった。


「無駄ではないが、徒労に終わりそうだね。君たち四人では無理だ。発想が終わっている。ボクの計画を阻止するどころか、逆に堅実なものにフォローしてしまう。正直言うとガッカリだ」何某は心底幻滅したかのように言う。

「私達では、及びませんでしたか」幻想ちゃんは未だ最期の日を迎える前にゲームエンドを言い渡されて力尽きそうな顔をしている。


「ですが、わたし達の手が尽きた訳では有りません」と幻想ちゃんはレポートの束を何某に渡した。

「へえ、"矛盾世界仮説についてのレポート"。論文かな?」何某は手渡されたレポートを見るのを怠ることもなく査読していく。


わたしにはあまり意味が理解りませんでしたが、貴方には何か意味がるのでは?と」幻想ちゃんは言う。

「ほぅ、相対性ゾンビ理論を此処まで脹らませるとはねえ?……"世界は斥力で成り立っている"ふむ、目の付け所は悪くない。"粒子性連続性と波動性連続性の中間にわたくし達の認知世界は存在"面白いな、どうやって此処まで辿り着けた?」何某はもう簑笠府イリスと呼ばれた少女には興味が失せたようだったかのようでレポートを読む速度が速くなっていく。


「……成程、眼福だった。認識を改めよう。仕様として撤廃しようとした"モノ"がこれを導き出したなら、ゲームは続行しよう」

「……」安堵した幻想ちゃんだったが、それは甘いなあ、ということを何某は思った。


「君がこのゲームを降りて、代打ちとして"彼女"に出てきて欲しいねえ?」何某は弱りきった獲物を弄ぶように、なぶるように言った。

「まさか、あの子をこんな"地獄"に落とすとでも?」幻想ちゃんは泣きそうに言った。


「そう。本末転倒だ。君は、君の家は誰か一人を残す為に、君を贄に差し出させるを得なかった。だけど」何某は慈悲深い人物であった。苦しみを長伸ばしにするなら一思い息の根を止める、そう言う習性の存在である。

「ですから、あの子だけは。あの幼い子はお見逃しください」幻想ちゃんは慈悲に縋った。何某もそれに応えたいが、その先を見据えて違う未来が見えていた。


「この"狂った"ものを、この結論に至れるなら。たったあれだけのヒントでこの結論に至るなら。自身の答えに自信があればこそ、君の大事なあの子が登壇してくるとなるとゲームマスターとしては断れない」と、言って何某は幻想ちゃんの背後を見やる。

「……え、と。本当に、声を、上げれば、認めて、くれますか?」幼い少女がそこに佇んでいた。


「……千兎畝ちとせ、どうして?」幻想ちゃんは戦慄いた。最悪の状況である。

「……"千兎畝"、それはわたくしの台詞です」もう一人の、いやたった今、この少女は襲名を自ら宣言した。舞台に立てる"簑笠府の者"はイリスだけである。


「一応確認しておこうか。君にこれから降りかかる過程を知った上で、その宣言をしているのかな?」何某は歴史の頑強さを忘れていない。


世界において、内部に含まれた要素である知性体は、場として振る舞う。

例え、正確に未来を知った上で、それをカウンターするように歴史を変える行動することは出来ない。

それは、このレポートの内容にも含まれている。人の紡ぐ歴史とは縦糸と横糸とで編み込まれているかのようなものだ。

解せる部分でしか、変えようがない。変えたとしても総量としては大して変わらない。


最も、そこに、其処に、底に、大きな漏れ出る(リーク)先が有れば、話は変わる。


わたくしは、其処に、完成した理論として、陥穽の奈落(じごく)と、底へと、辿り着きたい。わたくしの答えに、殉じたい。ごめんね、千兎畝。わたくしは、心底、狂ってるの。地上で、陽の光より、地獄で月明かりの元で、生きたい。わたくしは、生きる事で苦痛を受けて、居ますが、掻痒、は耐え難い。わたくしは、そうやって、逝きたいの」と少女は言った。

「よろしい、それを受諾しよう。悪いが"千兎畝クン"は口を挟まないでくれ。それで?君が次に問うのは如何な要件かな?」何某は、此度のゲームマスターが、新たな挑戦者を迎えて言った。


「勿論、その論文の、特典と、得点。わたくしは、ハイスコアを、目指しました。その為に狂ったのです」

「今出ているヒントで、これに辿り着くのは想定外、だが君の"これ"が当たっているが故に君は今から演ることは徒労に終わりそうだが?」何某はレポートを指摘しながら言った。


「はい、歴史を変えることは、総量としての知性量を減る事が避けられません。精神クオリア消失(リーク)で、悪い結果には"変えられます"。歴史の堅牢性には変換点以外では此れしか手が有りません」少女は饒舌になる。

「そうだね、君は5年前の変換点において、ボクの世界を変えるための訓練に参加できなかった。参加できていない以上、君は員数外だ」


「海上に突き出た岩礁、は航行するのに邪魔に成れば、溺れるものは縋り付く事も出来ます」

「じゃあ、その違いは何処に出るのかな?」


「偶数と奇数、そこで差が出るかと。世界の規定として、普遍の原理として、斥力を扱う以上、不対のそれがまるで磁力のように、なるのと、対になったそうでないのは違います。知性の場も、似た様に振る舞い、ます」少女は一息に捲し立てた。

「……岩礁じゃ、味気ないなあ。そうだなあ、知性の業が落とす影が、長く昏いものである以上、それは"塔"と呼ばれるべきだね。その怪物の名は"塔"だ。君はそれに挑む、これで良いね?」何某はこれからの試練に名を付けた。


これこそが、これより5年後の4つの塔を巡る戦いの前哨戦であった


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