バッドエンド5 鏖殺ちゃんとのフライト
バッドエンド 鏖殺ちゃんとのフライト
「こんにちは?いやこんばんは?早紀さん」新庄幸人は悲鳴を出しそうになったが何故悲鳴をあげるのか?ということを四ノ原早紀に説明できそうになくて困惑した。
「はい、こんばんは。そしてお久しぶり?というほどでもないですね新庄君。とりあえず息災のようで安心しています」四ノ原早紀はまるでたまたま居合わせたって感じで有るかのように言う。心臓が強いのか?
軟禁状態は思いの外、あっさりと開放された。だが、彼女が十二奥家に、その中心に通じるなら何も終わってないし、解放も終わっていない。このフライトが無事に終わるのか?すら怪しい。
幸人の今の協力者であるイリスには幸人の異能で簡単な安全報告は出来ているが、携帯端末は側にはない。帰国できたら戻ってくるのだろうか?と思うと早紀がジップロックに入った幸人の端末を示したが、渡してくれる気配はない。
「議長からの預かりものです。多分、何も仕込まれてないと思います」と早紀。しかし、返す気はない様だ。返すか、帰すか?このどちらを選ぶのか?と聞きたそうである。
「経緯は早紀さんは知ってる?」幸人はここで早紀がどう話すか?を探りを入れた。
「ん?連絡自体が唐突でしたが、十二奥家の家長が揃うのは私の知りうる限り今回が初めてですね。昔は無理やり招集されて、元の場所に戻されるた様ですが、今の時代は交通設備も便利で早いので現地解散ってのが多いみたいです」と早紀。
「じゃあ、"俺が"居た議会みたいな所にも早紀さんは居たの?」
「議会場は、急遽手配されたようで、招集された関係者全員の入れる所ではありませんでした」早紀さんらしい言い回し。居たとも居なかったとも言わない。
「招集って、手段は力、つまり異能?」幸人はツッコミどころを外した。
「異能、というか、力は現実の物理法則が働く空間より上位から座標だけ見て、そこから降りてくるようなモノらしいです。
なのでその上位世界をもし見られるなら、そうですねタグが付いている者にだけ伝言を渡せますし、物質を転移させる力なら存在座標を飛ばす事も可能、という感じらしいです。
使い方としては便利かも知れませんが、今の時代で足のつく手段で現地解散ってのはどうかなって思いますよ」と早紀は言った。先程の議会場に居たかどうか?ってのに早紀なりに返事をしたらしい。
「そこだけみたら、まるで異能を、力だけを他の者に渡せたり出来そうだね」と幸人は言った。上位世界、そんなのを把握できたならもっと効率的に運用できたりはしないのか?と。
「そこが北の極点の造る力の限界なんですよ。星を見れても、そこが極点であると理解っても。星に手は届かないし、星を動かさせない。その星が墜ちる宿星も変更できない。異能生産の自己言及性の堅牢さは不動天宗家すら触れられないモノらしいです。幸人さんが危険視されても、障れないのです」
「"俺の"それが運命みたいなのを変えられるとでも?」と幸人は言った。
「ええ。世界を滅ぼすのが貴方なのでしょう?だから私達4人は貴方を注視しています」
「それは、何某さん。ひいては佐爾波家の陰謀通りなのでは?君らは"僕を"過大評価しすぎているのでは?」それはイリスが幸人に命を容易くBET出来てしまったことからずっとずっと思っていた。あの簑笠府という由緒ある名家の美姫である彼女ですら身体を投げ出し捧げた、実際には幸人の、虚栄心ごと全てを飲み込んだのだがそれが重すぎてならない。
逃げ出したい。逃げて何もない所で責任と無関係に惰眠を貪り娯楽に耽りたいとすら思う。そう言わないのはイリスが、幸人の恋人が、絶望しながらもそれを認めてしまうからだ。
それくらいには幸人も、一人の少女と長く、深く交わってしまった。それが何を根拠にしているのか?が理解ら無さ過ぎて直視を避けてきたのだ。
しかし、もうバッドエンドが来てしまっている。いや既に飲み込まれていた、と言えよう。
「僕が、今回のEndに関わっているとは思えない」
「その考えは甘いのでは?貴方の何が、何を破壊しているのか?という自覚がないからと言って、責任は問われません。多分誰も咎めないでしょうが、"幸人さん自身以外は"。では聞きますが、託宣によるこの世界の滅び、もしくは貴方の命運の尽きる可能性は何時頃と出ましたか?」早紀は幸人が以前行った未来予測の異能の使用許可を忘れては居ない。
「秋頃と、だけしか」いや、DEAD ENDは年が変わったら、だからその前に一度何かの終りが来る、としか分かり得ない。託宣ではそれは「アキ スキ」、もしくは「シ ヨ ト ウ」。これは一体どういう事か?別の意味が読み取れて、それを僕とイリスが見逃している?
「ふふふ、まあイリスでも此れを見逃しても仕方ないことといえますね。だって、時間の基準が1時間で動く、なんて想定してませんでしょうし」と遂に四ノ原早紀は新庄幸人の隠蔽演技を見抜いたと言った。
「ま、さ、か?」幸人はもう一つの可能性に気づいた。
「ショートウォー、もしくは」
「"赦す"。見逃す」幸人の出した答えは残酷な結論だった。
「ユールーズ、新庄君貴方の負けですよ。貴方はこのままでは帰れません。ふふふ、議長が戦争を咎められて、停めるわけがないじゃないですか?だって勝てる戦を放棄する無能は要りませんから!」早紀はようやっと新庄幸人の本性を見抜けた。この男こそがイリスの代打ちでプレイヤー席に座っている対戦相手だという確信を得たのだ。
「君は一体何時から?僕を怪しんでいた?」幸人が観念するように言うと。
「まあ、私は最初から全員を殺す気で居ましたので、結構早い段階で十二奥家の最も過激な派閥に擦り寄りました。10年前ですね、そこでまあ私の求める終わりがある男に阻まれると。後は一人ずつ確認していって困った事に幹雄さんも、耕造君も私と同じエンドを求めていると。対戦相手が居ないのでした」と早紀はお手上げと言った。
「君に"最初に"力を渡したのは僕じゃないよね?」幸人は確認のために言った。
「ええ、新庄君より先に、"力"を手にしました。」早紀ははっきりと言った。
「新庄幸人の世界観は異能、十二奥家の世界観は力」幸人が言うと。
「協力者は明かせませんが、はい、概ねその通りです。早紀は最初から居もしない敵に、独り相撲を取っていました。しかし、まあ不思議ですよね?時系列はさておき、因果関係は成立していません。そこが私も分かりませんが私は勝ちさえすれば原因は問いません質ですし」早紀はニンマリと捕食者の笑みで答えた。
「僕らに見逃せと?大量殺戮を?」
「はい、このままイリスの元へ貴方を帰す条件です。このBadEndの締め方は此方に譲って頂きます。イリスには申し訳ありませんがもう少しお預けを、いえ私の元に置いておきたい気持ちが出てきました」
「理解ったよ。とりあえず僕のスマホを返してくれる?」
「どうぞ、此処まで来たらもう終わりを整える、だけですので良いですよ」と早紀が幸人の端末を差し出した。
「一体何が、このスマホには在ったのかな?」
「何も?議長がどうしてパリ講和条約に拘ったのか?と言うのが理解りませんが。私は十二奥家の家長の口伝を伝えられていないので」と早紀はもう離陸しますね、と言った。
「とりあえず、もう手遅れとしていくけど答え合わせがしたい。君の陣営は第4勢力ではなく、佐爾波家の思惑通りに動く勢力だよね?」と幸人は聞いた。
「はい、イリスこそが第4陣営ですよ。何しろ実家の簑笠府も佐爾波の陣営ですのに、彼女がそれの意向通りに動いた気配がありません」と早紀が言った。
ウンザリしながら幸人はその事実を噛みしめる。イリスの実家から何も無かった筈はなかった、ということだ。
そうしながら幸人は自身の端末を見ると分かりやすく痕跡が残っていた。ストレージの百科事典にあった歴史の、近代史のところが常駐されていた。
なるほど、正史ってモノを知っているヤツがこの異世界の辿ってきた歴史を知ってはいけなかった、ってオチだったか。
こうしてまずは四ノ原早紀が1つ目の終わりの訪れとなった。
この後、同盟国の合衆国と、日中の即席の同盟とが短期決戦の戦いが起きた。
一体何をどうしたのか?理解らないが、日本に新庄幸人が居ない間に自体は急変していた。
半日しか時は空いていないのに、イリスの懐が、その温もりをやけに懐かしく感じていた。




