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異能生産(Dehumanize)  作者: 赤石学
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海千山千2


海千山千2


「はぁ、山乃原君と沖ノ島くんには申し訳ない気持ちでいっぱいです」簑笠府イリスは先程協力を承諾されてくれた二人に対して申し訳ない、と言った。

「別にいいって、肩入れするならイリスちゃんのほうが良いからね」沖ノ島はキリッと言った。


「四ノ原さんは同性の友達が沢山、それに比べてわたくしは同性の友達は居らず、側にいる金銭で繋がっているビジネスパートナーの梓梢あずさこずえのみ。あわよくばオフパコでなくとも交換先さえ入手するという望みもありません、よよよ」とイリスは泣き崩れる振りをする。

「……あの、確かに四ノ原さんの友人達は美姫ばかりで、少しでも会話できたら良いかな?連絡先一つくらい貰えるかな?みたいなノリで、異能アビリティー持ちでは四ノ原さんシンパやってましたがね、なんというか手心というのがありませぬか?」と急所を凶器で刺されたかのように呻く二人の非モテ童貞ゲーマー(元いじめられっ子)である。


「あら、ごめんなさい。わたくしとしては気心の知れた、同じゲームを遊ぶ同好の士との雑談はこの辺の毒を持っているのが適切と思っていたのですが」イリスは本気で心配した様子で狼狽する。

「まあ、スケベゴコロと言うか性欲に関しては、政治、信仰くらいのレベルのタブーとして触ってやるな」と幸人は既に童貞を脱している余裕か、三人のやり取りを俯瞰して的確なアドバイスをする。それが二人の非モテの機嫌を損ねた。


「いいよなー、最強の異能アビリティー持ちの幸人くんはー!!流れでパコるおコボレが振ってきたりあるしなー、俺らはどうせ数合わせの異能アビリティーだしよー、使い所が難しくて存在感がないしよー」山乃原は自身に宛行われたのが即死(バランスキラー)系故に活躍の機会がレアであった。と言うか登場したら敵は確殺なので活躍させにくいのだ。

「お、そうだな。俺はさらにそれが行われてからようやく対象を取れる異能アビリティーだしなー、だーれも俺のことなんか覚えてないっしょ!!」沖ノ島はさらに、山乃原の異能アビリティー死んだ人(哲学的ゾンビ)にしか実行できない人心操作系の、これまた活躍の機会がない異能アビリティー持ちであった。

勿論、それは異能生産(Dehumanize)の方向性の探る過程で必至の異能アビリティーであったのも新庄幸人には分かっている。それは二人の善性故であるのだ。救いがないとは思っていると、そこへ梓梢が挙手をして助け舟を出してくれた。


「よろしいですか?提案なのですか、お二人が20代の年上の、背が高い女で、可能であれば20代前半の内に結婚と出産をしたい、しかも二人と同時相手を交際しても良いという条件を問題ないするのであれば、梢はお二人とお付き合いするのは全く構いません」と爆弾発言をする冷徹な梓梢とは思えない言葉を出した。

「はぁあ?!」比較的まともな反応を下のイリスと幸人である。しかし当の本人らの反応は真逆であった。


「「お願いします!!」」息の合った二人。即決である。こういう時本当に男性側に人権というのがないのが恋愛事情である。

「うおおお……」イリスと幸人は十代の性欲の強さに恐れおののいた。二人は主人と奴隷の関係契約を結んでいるが、一対一であるのが二人のスタンスである。幸人側は自由であるが、隷属しているイリスに慈悲的な扱いをしている君主であり、この後宮に追加人員が来るとイリスは想定していないし、それ覆ったら脳破壊だと狂い出すのは免れないのである。


「梓、貴女……本気なのですか?」イリスは梓梢の正気を問うたが、イリス自身の正気(主に性事情)を常々問いたい幸人も、此処は一旦飲み込んで異性の友人の正気を確認しようとした。

「はい、正直言うと、年下の男子を複数同時に、同意の元で交際できるのはとても魅力的です。私では貞淑を守れないのでまあ、お嬢様と違って性病のリスクは減らせませんがそこは要相談でしょう」梢はうっとりした顔で淡々と話す。こういう所は梓とイリスの主従はお似合いといえよう。


「お前ら、それで良いのか?どっちかがお互いを恨み合う様な事になりかねんぞ?」と幸人は一応念押ししておく。

「遊びで良いんだよ、俺らはお前と違って拗らせてねえから、正直お突き合い含めた異性との交友ってだけで、大満足だ」と山乃原と沖ノ島はシモの欲求果たせる刹那的な関係でいいと言ってのけた。幸人はドン引きである。イリスの時と違って異性、同性の友人らの性欲の話に気分が悪くなりそう。おかしいのは僕だけか?と思い始めた頃イリスがそっと囁いてきた。


「幸人さんの感覚は共感できるかと。わたくしも今、数少ない同性の知己の性癖を今知って正直困惑してます。社会的、金銭的な契約関係の間でなければ人間不信が進む事案かと」イリスは幸人の心情を正確に把握していた。おかしい、ここで一番のニンフォマニアの女が一番マトモに見えたのだ。

「ああ、うん。良かったよ。君が僕と同意見で。まあ、今後は適当に動向を把握する程度にしておきたい」と幸人が言うと当然ですとイリスは返答する。


「まあこれで、俺らも新庄君らと同じ目線のグレート・ゲームに参列しても良いかな?今ならどんな面倒な、怖い情報教えられても平気だわ」と梓さんと握手したいと言いながら彼女の少しだけ筋張った鍛え上げられたフィジカルを感じさせる手のひらをさわさわと堪能している山乃原君。

「そういうことだな、例えばさあ、十二奥家(じゅうにおくいえ)とか言う、力と呼ばれていた異能アビリティーの保有権を唱える厄介な因習の者達とかさ。そいつらが新庄君の異能アビリティーをパクった連中でしょ?」と梓梢から「膝枕はどうでしょうか?」と許しが出たので彼女の膝の上を堪能している沖ノ島君の言。そしてその二人を手玉に取って御機嫌な梓さん。


「まずは、そうですね。力を単純に取り戻して、家の権力を振りかざしたいだけの雑魚。これは分家の分家、みたいな連中です。どんな力を過去に家が持っていたのか?それすら理解ってない連中です。これは問題になりません」梓は説明する。その傍らで山乃原君も膝枕に加えている。とても楽しそう。

「次は、そういう復権派の中でも12の当主の姓を名乗れている、もしくはその近親者は過去に保持していた力を正確に知っていて、使い方も口伝などで知り尽くしています。敵対すると厄介なのは此処らへんです。なので、我々は改革派の者と接触を持ちたいと考えています」イリスは梓に対抗して幸人を膝の上に誘導する。この程度ならまあ良いか?という感じで言うがままにされる幸人。


「改革派とは?」沖ノ島がスマホを弄りながらメモ帳を起動する。

「12の家が持っていた力の中で特に強力な異能アビリティーを、我が者にしたい者らのことです。そう言う事では彼らとは和解が可能といえます」梓梢は両の手で二人の少年の顔を抱え持ちご満悦である。


「でもそれってさ、復権派と言う、《強い》本来の力を持っていた家と、《弱い》本来の力を持っていた家とでは違うよね?それから簑笠府家はその基準だと何処の派閥と認識されているのかな?」これは幸人がイリスに聞いた。

わたくしは、簑笠府家の本来の力である改竄隠蔽(天狗の蓑笠)を得たことから復権派とも言えますし、我が家の権力で十二奥家筆頭の不動天家の北の極点(1の輝星)とほぼ同じ異能生産(Dehumanize)が新庄幸人さんのモノなので改革派とも言えます。

ですので我が家は、復権派かつ改革派、というポジションで両者の派閥に同時にアクセスしています。これは真行院幹雄君も同じ様なスタンスでしょう」とイリスは説明した。


「ミッキーはどういう感じになっているのかな?異片鑑定(judgment)はどの家が持っていた力なのかな?」山乃原が起き上がってドリンクを飲んでから言った。

「十二奥家、の12の数には入っていませんが佐爾波家と言う当主のみに保有されていた『他者の力を鑑定するモノ』を建前では得た事になっています」沖ノ島は梢さんの膝の上に顔を沈める勢いで齧り付いている。それをものともせずに梢さんは淡々と説明を続ける。


「建前?」沖ノ島は首を傾げた。

「ええ、何故なら佐爾波の家には、力なんてものがないんですよ。あの何某という怪人自身が力に頼らず、技術を極めることによって習得した、力とは非なるものです。

なので幹雄君が他の家である佐爾波の力を得たかのように振る舞えば改革派に見えますが、事実を知る者たちは真行院家は本来の力を得ようとしている復権派の中でも真相に近い、厄介な連中だということです。

彼と今は歩調を合わせられるのは我々の持つものの中でも大変大きいアドバンテージといえます」イリスは幸人の耳かきをしながら答える。


「すると、一体何時、スタンスを決めるか?ってのが焦点になってくるな。イリスちゃんは何時裏切るつもりなのさ?」と沖ノ島が問う。

「2020年になったらです、そこでDeadEnd(行き詰まり)が来ます。それまではBadEnd(悪い終わり)には彼らの内ゲバをせいぜい利用させて貰う予定です。それ以降は彼らの家の事情など些細なことになっているかと」イリスは先を見通すように言った。


「力をよく知る彼らが問題でないというのはどういうことかな?」山乃原が聞いてきた。

「それは、そこで彼らは全滅する筈なのです。DeadEndも、BadEndも何某さんが設置した世界破壊のギミックです。十二奥家はそうしない為のバランサーです。バランサーを機能不全にするために、弱い力だがそれを保持している家を軽んじるみたいな扇動をしているのが何某さん本人だからです」



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