海千山千
「山乃原よう、イリスちゃんの件どう思う?」沖ノ島はネットフレンドであり、クラスメートであり、同好の士としての最も古く信用できる山乃原に相談をした。
「ああ、イリスちゃんが美人局で、新庄君を陥れてお前も罠にハメたってやつか?」と山乃原は沖ノ島が先日の出来事を出してきた。
「どう思う?」
「無いな」一言で切って捨てた。
「どうしてそう思う?」
「仮に新庄君を罠に陥れたとして、その時点で黒幕は破滅するからな」
「罠に陥れたらなんでその時点で逆転が出来るんだ?」
「イリスちゃんは未成年だからな、うちの淫行条例で新庄がとっ捕まる、その前に」
「その前に?」
「法律を破るからスキル枠が増える、新庄君のな」
「ああ、そういう事か」鈍い沖ノ島にもありえない状況がわかった。
「うん、流石に新庄君もそう言う悪事に巻き込まれたら、俺らとの約束である『相談せずに異能を作らない』という手続きを経ずに自衛の異能を作らないとは思えない」
「その事件の悪党が、強請るとしてその過程で新庄君の罪状を明らかにするだろうから、そこで気づくはずなんだよね、だから無い」
「じゃあ、その悪党が俺らと同じ異能持ちだったとしたら?」
「それもないな。じゃあなんで先日の新庄君の異能が無法にコピーされた事件が大騒ぎなったじゃん?つまり新庄君の異能が一番重要なんだよ、何にでもなる鬼札だからね」
「となると、先日の強請の件はどういうコトなんだ?」
「……わからん、が。今日その案件を問われた時に閃いた。これは、イリスちゃんからの遠回しのメッセージ、なんじゃないかな?って」
「なんでそんな回りくどい手を?」
「イリスちゃんがずっと監視されてるとしたら、どうだ?」
「あ、あー」沖ノ島は新庄も居合わせたあの時も監視されているのを自覚しながらイリスが振る舞っていたのを思い出した。
「じゃあ、どういうことだ?あの時の話は全部ウソでいいのか?」
「違うな、ウソばかり、とは考えにくい。例えば、だ。イリスに御主人様が居る、其処までは間違ってない。だが、果たして婚約者でもない、何処かの男が簑笠府家の令嬢のイリスを手玉に取って操って新庄君を陥れた?
これも考えにくい無能力者では、な。俺なら仮にヤリチンのド悪党のイケメンだとしても、異能のJOKERである|異能生産(Dehumanize》の新庄君を、イリスが自身の御主人様にしてしまえばいい」
「……でもさ、女って自分が好きな男に入れあげるもんじゃね?法外な額の貢物だって身体を売ってホスト狂いみたいな女とか」沖ノ島は独特の女性観をお持ちのようだ。
「違うな、女ってのは最終的に勝者となる男にこそ鞍替えするもんなんだよ、それが最愛の男だったとしても、敗北者の遺伝子なんか残せない。簒奪者の男の遺伝子こそを残したくなるように、股座が濡れる様に出来ている」山乃原も独特の女性観を持っていた。
「つまり?」沖ノ島は先を山乃原に問うた。
「イリスちゃんには御主人様が居る、それは別人だったかもしれない。でも、新庄幸人は既にスキル枠が複数に増えている。淫行条例を破ったことに因って。
そしてハッキリしてるのは新庄とイリスちゃんは肉体関係に在る、と。此処までどう考えても正解だ、だが俺らは男でその言葉の取り方が違う。
そして監視者の、恐らくは四ノ原さんとは全く違う受け取り方をすると言う確信を持っていて俺らには被害者として接触してきて、同盟の誘いを持ってきたと考えて良い筈」山乃原稔は言い切った。
「なんでこんな回りくどい手で?イリスちゃんと新庄君は俺らに何を言いたいんだ?」沖ノ島は疑問を上げてきた。
「あのさあ、沖ノ島。俺らはなんで四ノ原さんと真行院君に肩入れしてる?」
「そりゃまあ、四ノ原さんが可愛いし、彼女の友人ともお近づきに成れた……」
「だがさあ、彼女らが俺らを視界に入れることはないんだよなあ、でもさあイリスちゃんは」山乃原は呟くように、夢心地のように唄を詠うように続きを口ずさんだ。
「俺らの大好きな謎解きゲームを用意してくれた。等身大で接してくれた、視界に俺らが入っている。なあ、俺らは無理めだけど、俺らの憧れを追うべきなのかなあ」山乃原は言った。
「ああ、そうか。俺らは下心でこの異能ゲームに参加しちゃってたんだよなあ。参加するなら最高のメンツで、モチベーションの高いプレイヤーと共に遊ぶべきだったんだよなあ」
「じゃあ、イリスちゃんと新庄君に確認を取ってこの考察が合ってたら、どうする?」
「勿論、こんな極上のシチュエーションを用意してくれた側に、な!」
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「イリス、沖ノ島君から連絡が来たけどどう返答する?」新庄幸人は、刹那の恋人である簑笠府イリスに問うた。
「へぇ、そうですか。これは凄い、ほぼ言い当ててますね、うふふふっ。私を支配している御主人様は如何が為さいます?」イリスは蠱惑的な眼差しで美人局の被害者、的なポジションで周りを欺こうとした己の真の御主人様に。挑発的な眼差しで言葉を促す。
「流石にうちの自慢の攻略チームだよ。生半可な罠じゃあ逆効果だったね。どうする?僕としては是非ともブレーンとして招聘したい所だね」幸人は自分の意志で方向性を決めた。
「ほぉーん、彼らは私の印象では、早紀さんの友人達とお近づきになりたいという下心で、早紀さんに肩入れしてる、そういうふうに見えましたが?」イリスは鋭い。男の助平心などはお見通しである。
「うんまあ、彼らはそれだけじゃないよ。きっとミッキーの調整した環境での異能バトルもいいかと思ったけど、やはりヒリつくそんなガツゲーやりたいんだろうなって。良いよね?送るよ?」
「幸人さんがそう為さるなら私は従うのみです」イリスは決定権を持たなかった、が。
「そう決めたならフォローに回る所存です」と責任を捨てないのである。
「助かるよ」幸人はそう言って布団に倒れ込んだもう睡魔が限界だったのである。




