バランス調整
「僕は異能の環境を作りたいんだよ」真行院幹雄はそういった。
「何かを基準に、ということ?」新庄は自分の隠れヲタ仲間の成長に感動してした。
最初の出会いは印象はいじめっ子の腰巾着という感じだったが、幹雄は耕三の暴走を何とかコントロールして被害を少なく、それでいて解消をさせていっていたのだ。
そこで彼とは密かに適当な雑談をするようになった。もちろん耕三の居ない間しか許されないものだ。
客観的には耕三のイジメの被害者が増えていく方向性を決めたのは真行院だが、新庄は自分の被害が減ると思って被害者の増えるのを黙ってみていた。口出しすれば何が有るか?分からないのだ。
イジメ被害者同盟として何人かと仲良くなった、と言っても薄い薄い軽薄なものだが。
彼らとの共通点はオタク趣味でゲーム好きなところである。
何の因果か、同じクランに参加してを結成したクランで半年くらい遊んでいた。
そのクランの進行運営を真行院がやっていた。勿論監視を兼ねたものだろう。
そこでの交流で真行院もゲームのバランスなどで意見交換するまでになっていた。
惜しいのは、彼が耕三の暴走を、超えてはいけない一線を越えるのを止められなかったことである。
そして、その結果しだいで非情な決断を俺らに行えるということだった。
だが、それは解消した。真行院幹雄は自由を得た。
目の前の耕三の死骸を見ながら晴れ晴れとした顔である。
そこにいるのは全員何かしら耕三の被害者である。
何ら罪悪感を誰一人感じていない。
「異能作成のノルマは1日1人、2人以上の作成にデメリットはなかった、となるとやはりこれは異能の蔓延が目的であると言えるな」幹雄は自分の異片鑑定(judgment)で慎重に鑑定しながら考えを述べている。
「だからこそ、耕三には悪いが、お前はやり過ぎた。報いを受けたと思ってもらおう。四ノ原まとめておいてくれ」
「はい、幹雄さん。山乃原君が即死系の異能と、沖ノ島君が死体操作、どちらもかなり強めの物だと思います。これで今日だけで2つ、そういえば"耕三君の特殊性"はどうしますか?」
「どういう事ですか?四ノ原さん?」新庄幸人は耕三はこのまま死んでもらうのだと思っていた。
「僕が異片鑑定(judgment)を得てからまずやったのは町の人間をみんな鑑定することだった。普通の人は異能枠が1つしか無かった。だが、半グレのチームを遠巻きに見ていたが実に恐ろしい事実に気づいた。奴らは全員、異能枠が3つ以上有ったんだよ」
「え?それはヤバくないですか?」新庄はその事実に懸念を隠せない。
「そうだ、万が一、異能をこのまま1日1つの最低条件のノルマを満たしていく場合、"異能持ちを増やすか?"、異能枠が多い人間に安心して危険な異能を任せて、異能の蔓延の時間稼ぎをしたかった。が、それは適わないと見ていい」
「だからこそ、異能の基準は基本的に"殺す"を作ったら"生き返らせる"ということで相殺していくしか無い」
「これが俺の考える、異能生産(Dehumanize)の環境の指針だ。必ず天敵を作る方向性で何とか凌ぎたい」