幕間終:一方その頃
幕間終:一方その頃
「こんにちはー」無遠慮に訪ねてくる近所のおばさんが来た。
「こんにちは。お隣さん」私は応答するために仮面を被る。正直うざい、が黙っておこう。
「作りすぎちゃって」とまたおばさんはお裾分けに来たようだ。これで何度目か?
「おばさんの作るご飯は美味しいから楽しみね」私はこう言ったが手作りの食事など悍ましい。
調理工程の何処でも、異物を混入させる事が可能だ。それどころか、所詮はアマチュア。
添加物を厭い、そのくせ衛生状態に無頓着でありながら、腐らない食事を防腐剤が入っているなどとと嘯くのがアマチュアだ。
その点工業製品は良い。金を支払った対価に責任を問うことができる。
好意による行為に咎を問うのはいけないことだという風潮が気に入らない。
外食も良い。衛生に問題があれば保健所が入れば問答無用に解決する。
「ロールキャベツを作ったのよ」とおばさんは言うが、いつも作りすぎるのだ。どうやら息子が家に帰らないのに、彼の分も作ってしまうというのだ。
「私、ロールキャベツ大好きなの」適当に話を合わせておく。
「どうぞどうぞ。きっと美味しいと思うわ」おばさんは満面の笑みだ。
「ありがたく頂きます」と扉を締める。
そのまま、その料理をシンクにぶち撒ける。ロールキャベツを解体して、細かく取り分けると、料理の中に混入した髪の毛を見つける。
やはり、料理自慢と言ってもアマチュアに過ぎない。こんなものを外食などで提供したと判明したらどうなると思っているのか?私はその髪の毛を取り出すとパウチにしまっておいた。
これは確証となろう。
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同時刻
「新庄様」簑笠府イリスの家に仕える侍従の梓梢から声をかけられた。
「梓さん、こんにちは」新庄幸人はこの人からイリスの両親に自身のことが伝えられるのではないか?と警戒していたが、先日の話でその誤解は氷解した
「今日の昼食ですが、お嬢様が手ずから作られたものとなります」梓は淡々と伝えてくる。
「ええ、ああ、うーん」正直に言うと幸人は手料理というのが苦手である。自身の親が作るご飯が美味しいと思うことがなかったのである。
用意する手間を考えるありがたいが、偏食傾向のある幸人にとって手料理というのは嬉しくない。
むしろ手間のかからない、既製品。とりわけ品質が保証されているレトルト製品が大好きである。
「そう言わないでください。ちょっとしたものですよ、御嬢様の物は。ここは給食か何かで、残すと面倒だという感じで完食為さって下さい」と梓は言った。
「はぁ、確かに。イリスとの契約から、そう危ういものは出ないとは理解ってますが」幸人は先程までイリスが死にかけた契約の効果を考えるとイリスも余程の自信があるらしい、というのは伺えるが。
「不味かったら、お仕置きと称して新庄様の好きなプレイをお嬢様に行えば良いのですし」梓は全部聞き及んでいると言う体で言った。幸人の背筋に嫌な汗が流れる。
「本当に、イリスの親への報告とかは、為さってないんですよね?」幸人は念押しした。
「ええ、そこは安心して下さい。わたくし梓梢は、簑笠府の家、とりわけ権能に仕える侍従の家でして。もし、密告が怖いと言うなら貴方の契約で私を縛れば良いのです。他言無用、とこれくらいならできるのでは?」梓は安心しろ、と言った。
「流石にそれは、と言いたいですが誰かに血を操る簡易契約を試験したいと思ってましたが、その場合は貴女に頼んでも?」幸人はその提案を飲んだ。
「はい、それは勿論」梓はニッコリと微笑んだ。
「わかりました。梓さんを信頼します」幸人はホッとして言った。
リビングに行くと、イリスがエプロンを付けて食事を用意していた。美味しそうな匂いがする。
よく見ると様々な料理が並んでいる。レシピの豊富さを感じ取れそうな物だ。
「幸人さん、どうぞ。今回は私の用意したものですが、忌憚のない感想をお願いしますね」とイリスは微笑んで言った。が、エプロンが大きめなのか、エプロン以外には着衣の影が見えないのが気になる。
「ああ、そうだね。じゃあいただきます」幸人はイリスの着衣には触れずに食事を摂ることにした。
一口付けるとこれが意外に美味しい。いや飛び抜けたものや、陳腐な物ではない。きっちりと標準的な調理の為されたものであると分かった。
冒険していないが、地道に根を下ろした物であると感じる確かな物であったのだ。
「いや、これは意外だった。美味しい。なんか安心した様なそんな味わいだね」幸人は煮魚を平らげると、次の料理に手を伸ばした。
「ありがとうございます、過分な称賛ですが」とイリスは嬉しそうだ。
「実は料理自慢だったりする?」と幸人は聞いた。美味しいのだ。一体何時これを用意したのか?謎である。ちょっと先程まで房事に耽っていた筈だが。
「いえ、それほどではないですね。昼間に出歩けず、暇を持て余してた時に多少身に付けたものであります」イリスは謙遜ではなく心の底からそう思っている様に言った。
「いや、これ。煮魚?これ美味しいよ」と幸人の過去を振り返って魚を美味しいと思ったことはないのだ。
「ああ、やっぱり!それだけは私の物でして!さすが幸人さん!」とイリスはよくぞ理解ってくれたと言わんばかりに身を乗り出して来た。そのせいか、イリスのエプロンの下が見えてしまった。重力に引かれたイリスの乳房の谷間から股間まで何も身に纏ってなかったのだ。先程まで何度も突き刺した恥丘は幸人の目に焼き付いている。今なら並べられても誰がイリスか?という解いにも答えられそうだ。
「え?それだけは?」と幸人はイリスの痴態から目を離せない。彼女の邪気のない、無防備さは、幸人の性癖というか、警戒心を呼び起こさず彼の性欲を喚起させる。幸人の様な性欲に対して何重も安全装置が掛かっている人物には突き刺さるのだ。
「残りは全部、うちの家がやってる食品部の製品でして。冷凍食品や、レトルトをただ開けただけの物です」とイリスはニヤニヤと悪巧みの秘密を明かした。しかし、未だに彼女は自身の痴態に気づいていないのがたちが悪い。
「へえ、そうは見えないけど。なんでかな?」と幸人は適当に話を合わせた。
「秘密は皿ですよ。全部、器が最適な物になってます。手間をかけるには安定した食材と調理法と、その適した皿を持つこと、が飽きない食事のコツですよ」とイリスの邪気のない素顔はとても可愛い。これはまたどうしたものか、と幸人は思ったのだ。
「へえ、それは安上がりでお手がるかな?うちでもできるそうかな」とだけ幸人は言えた。我慢できそうにない。"さっきのは"義務であった。まだ欲する侭には性欲を解消していない。食べ足りないと此処で気づいたのだ。
「実は、その器というのが結構な値段のものでして……幾つかは借り受けたものも有りまして……あ、あの幸人さん?え?もう元気になって、ます、ね」とイリスも幸人の股間を見て山のようなそれに気づいたら、自身の姿にもイリスはようやく気づいた。
「ご飯は後で良い?」幸人は簡潔に言った。食事を用意したイリスには悪いが。幸いには彼女の手料理だけはまっさきに片付けられたのだ。
「ええ、レンタルした容器に付着物がこびり着いて取れなくなると困りますが、それ以外ではこれらは比較的保存が利きますし……」イリスも目が離せない。彼女は食い気よりも色気な少女である。
「え……と、こんなハイペースは幸人さんとは初めて会った夜以来ですね。確か、結構無理して奮い勃たせた、とかそういう言い訳を為されたかと。お忘れですか?」イリスが此処では受けに周る展開となった。
「後ろを向いて。イリス、君がその気がないなら僕は無理強いはしないかな」と言葉は穏当だが、もう証拠は揃っていると退路を断ってしまう。
「耐久性能をしたい。誓約成約の新造亜臓器が、短期間の荷重稼働に耐えられるか?を試したい、今すぐ」と幸人は論理的な理由も持ち上げる。感情的な理由は敢えて避けた。
「私が拒否できないのを知っているのにそれを言いますか?」とイリスは抵抗らしい抵抗をしなかった。昨日はそれで死地を彷徨う羽目になったのだ。それに今朝方の行為は天上の忘我であったのだ。
「レッドワードを口にしないで、興が醒めるから」とイリスの背面を此方に向ける。案の定全裸にエプロンだけという、痴女と淫婦を兼ねるイリスが演りそうなパーソナルである。しかし彼女の本心はやはりというか女性特有の男性からのアプローチを受け入れる形で、彼女のシグナルを察してあげることだろう。彼女はそういう女性特有な決定権を握らず、それでいて要望を正確に汲むという生態を嫌っているフシがある。
「どうしたら赦してくれます?私もこのサイズで連戦とは想定外でして、これはその冗談というか、私の普段のキャラ付けなら演らないと幸人さんには負担かなって」イリスはこういう女性なのだと言うのであれば幸人も負担が少ない。思い、想い、重いは他に懸想している男性へ向けるには身体が目当てだという様な振る舞いが良いのだというのが彼女の結論だ。
「そうだね、口の方で済むならそれでいいかな」幸人は折衷案を出した。イリスも規格外のサイズを短時間で挿れるには怖いだろう、という配慮である。
「では、この大きさでは私も初めてですが、励ませてもらいますね」とそのままイリスは咥えて何時もの口淫を始めたが、今回は色々と勝手が違う。
毎日のように彼女とはまぐわっていたが、案の定彼女は勝手が違うことで収まらせる事ができず、そのまま罰として女性上位体位のまま貫かれる羽目になった。
全ての後の祭りだったが、スキンがない状態でやらかしたのでイリスは大慌てで、侍従の梓梢にアフターピルを持って越させるようにして事なきを得た。
「えーと、本来は私はあらゆるプレイを受け入れる覚悟では有りましたが、例外としてスキンは用意なくするのは止めましょう」とイリスはぐったりとしながら言った。自身の暴走を制御できなかったのを淑女タイムで自己反省に陥っていた。
「はい、それは勿論です」幸人もこういう展開を全く予想してなかったので全面的に受け入れた。
プレイの即時停止、これは避妊手段を用意してない。となった。当然の話である。
何しろ、バッドエンドもデッドエンドも姿が見えないのである。そんな状況でやらかしたらそれこそ窮地であろう。




