幕間2
幕間2
夜の祭り、何とか祭りといったか。簑笠府本家の地元の山奥の都心部とは言えマイナーな祭り。
先日は真行院家の取り仕切りの海沿の街の興行の海開きとイベント。今度こそは簑笠府家のお膝元で、ということで半ば拉致に近い形で新庄幸人はイリスの侍従にして、今の仮住まいのホテルのオーナーの橘梢の運転する車に載せられて居た。
「新庄様、まあお気持ちはわかりますが、貴方のお力と時間をお貸し頂きたい」比較的常識人の梢はバックメラー越しに幸人に謝罪する。
「僕としては、君の家の令嬢を毎夜不純異性交遊に耽ってるのを咎められないだけ十分だけど」幸人は皮肉交じりにそういった。イリスの親族か、それに近しい人の苦情があればそれを理由に、ホテルの何処か一室を開けてもらってイリスとの同衾が終わればいいな、と思っている。
新庄幸人は健康的な若者であるが、毎夜強制される程には性欲が強いわけではない。簑笠府イリスという少女の手管に押し切られるのが毎回である。
そろそろ腰が、と言うか休憩が欲しい。ただ睡眠を貪るだけの日にちを過ごしたいのだ。
「我らが簑笠府が旧家の、十二奥家、と呼ばれる一族の末裔なのをイリスお嬢様からお聞きですか?」梢はそれに応えなかった。
「なんか、あるよね。程度には」幸人は其処らへんの「異能に対しての説明が全くいらない」経緯が気になっている。よくよく考えれば真行院と四ノ原の二人からして話が早すぎた、と今更に思う。
「つまるところ、我々十二奥家はかつての隆盛を取り戻したいと、願っている訳です。この12の家が明治の時代より前には国を越えた繋がりと権力を持っていたのですよ。それも大戦争までですが。新庄様は『天狗の隠しみのかさ』というのをご存知ですか?」梢は概要をまとめて家の成り立ちを説明してくれた。
「ああ、簑笠府ってなんだろう?って思ってたら、天狗。隠形の業を持つ、かつては鎌倉時代に牛若丸を育てたという、あれ?」幸人は聞きかじった話を思い出した。
「話が早い。我が家が仕える簑笠府家は、終わりの国で元服した、かの武将を鍛え上げた天狗の末裔ともされていますね、言い伝えしか証拠はありませんが」梢は何の抑揚もなく普通に説明していた。その話の中に不穏なワードが混じっていると気づいていないのか、気づいているのか?分からない。
「終わりの国、ね?なるほど」幸人はどんどんと嫌な気分になってきた。これは単なる異世界転生モノの亜種ジャンルだった筈だ。それが此処へ来て伝奇ミステリ異能戦記になりそうな気分が、幸人の背中を這い上がってきたのだ。
かの武将は、大和、ではなく『大和国』に逃げ落ちて、そこで大天狗である鬼一法眼の娘と懇ろになった際に秘奥の幾つかを盗み取ったと言われるのだ。
そういえば、何某という正体不明の魔人は自分の出自を何処かで"ダエーワ"と名乗っていたような気がする。これが"気がする"と言うのは、幸人の記憶の時系列では何処にも挟まるタイミングが理解らないのだ。
「遮那王の伝説を知っているなら話が早い、つまるところ、今回の件はその事例にそっくりと思いませんか?御先祖の伝承が、今頃になって歴史は繰り返している、と」梢は自身の仕える主が毎夜犯されているのをさも当然と言い切った。
「僕は、六韜に過ぎないってことですか?」幸人は気分が悪くなってきて自虐的に言ってみせた。
「まさか、梢は新庄様を現代の遮那王だと思ってますよ。お嬢様も同様の意見です。そして御屋形様も簑笠府の、秘奥。みのかさを取り戻してくれた英傑、と言う認識です。御嬢様のお好きなようにしてみろとのお達しです。ご安心しましたか?新庄様」梢はようやくニヤリと笑って微笑んだ。
「外堀が既に埋められているというのはわかったよ」溜息が出そうである。
そこで車は道路脇に停車された。そこで幸人は車を降りた。
「では、お祭りのあとで、プライベートビーチの在る別荘に送迎しますので、それまでは御嬢様と合流して祭りを堪能していってください」橘梢から連絡先を交換した。これでまた幸人の端末に若い女性の連絡先が増えた。
暫く歩くと、両脇を屈強の体格が良い梢の部下に守られた簑笠府イリスが幸人の側に来た。
彼女が纏う浴衣はこれはもう可憐で、よく似合う。わずかに日焼けした彼女は今までの病的な白さも美しかったが、これもまた健康的であり、それ故に若い男性なら劣情を催しても誰にも非難されまい、という美しさだった。
「どうでしょうか?似合ってます?この浴衣は?幸人さんの意見、聞きたいなー?」イリスは勝ち誇った表情で言った。だいぶ幸人の趣味を解析されているようだ。どストライクである。
「似合ってる」これだけを幸人はかろうじて言えた。罠にハマった気がする。外堀も埋められ、内堀もそのうち埋まりそうな勢いだ。
「ふふふ、これはまた"期待できそう"な反応ですね、ふふふ」イリスは蠱惑的に笑うと幸人の耳元に口を寄せて呟いた。
「え?何か?」
「着付けは出来るので、祭りを適当に冷やかしたら暗がりに連れ込んでくださいね?嫌と言うなら私が幸人さんを連れ込むんですけどね」イリスは頬を紅潮させて言う。
「分かった、分かった!とりあえず回ろうか?」幸人が言うとイリスは手を絡めてきた。
カラコロカラコロ、と履物の音が聞き心地が良い。
色々な出店を冷やかしながら、周ると程なく人気のないところに辿り着いてしまい、幸人はイリスが手を離すまいと掴んで暗がりの林に連れ込んだ。
其処へ居くると同時に、イリスはしゃがみ込み、幸人のズボンのチャックを開けていく。手慣れたものであっという間にポロリと取り出して、間髪入れずにそれに頬ずりを始めるたのだった。
「幸人さんの、このオリジナル。これはこれでベストフィットだったんですが、先日のプールでのバンプアップされた幸人さんの胸板を見たら、幸人さんの第2スキルの誓約成約の結合組織操作能力によるバンプアップも期待できそうじゃないですか?これは!もうこれ咥えていいですか?」イリスはもう待ちきれないという感じでハァハァと昂奮しだしたのだ。
「そうだね、僕もこれには愛着が有るんだけど、変えたくはなかったけど、ちょっと思いついたことが在ってね、この際に君の要望を叶えてみようかな、と思った次第でありまして」幸人はいいよって感じにイリスのオーラル行為に許可を出した。
「クチャクチャ、ペロペロ」イリスはもう成れた口業を行使しながら聞いてくる。幸人も成れたもので何を言っているかが理解って来ている。
「結合組織しか誓約成約では扱えないんだけどさ、異能の契約に必須な、脳とか心臓への重要な臓器に接触、という今の理論を新しい形にできないかな?ってことだね」幸人は毎夜イリスとまぐわうだけの男ではないのだ。
彼女の、不安がる懸念については幸人も既に気づいているのだ。




