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異能生産(Dehumanize)  作者: 赤石学
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十二奥家、旧家、簑笠府の家


真夜中の旧校舎の、使われていない教室。そして階段に出てくる自殺した少女の遺した、反省文が刻まれた学習机。


員弁という少女の、血が染み付いて乾いた赤い鳥居の形象する文字に、夜中の来訪者三人は円盤を置いて、それぞれが一指を乗せてテーブルターニングを開始する。

これは、巷の風俗としての、降霊術、ネクロマンシー、不覚筋動と潜在意識の混合、などといった紛い物ではなく、正真正銘の裏無い者、託宣(oracle)であった。


1人目は、託宣(oracle)の創造者の新庄幸人、2人目は簑笠府イリス、3人目は託宣(oracle)異能アビリティー保持者である。


彼女は恋占いという名目であれば人智には不可能な未来予知を、バーナム効果、どうとでも取れる曖昧な言い回しを越えて、実現する事を許可された者である。

もっとも、四ノ原家の長女の四ノ原早紀の言葉がなければ、託宣(oracle)を彼女が濫用することはない。


「京子さん、京子さん。わたくしの、夫と成る人とわたくしは結ばれますか?」イリスが死者に問う。

京子さんは、否。そんな人物は居ない。その名前は新庄幸人が文面を考えた時に即興で付けたものだが、未来を識る魔人、佐爾波鏡子きょうこと同名なのは偶然の一致だろうか?


「アナタ ハ トモダチ カレ ト ム ス ハ レ イナイ」京子さんはそう伝えてくる。新庄幸人はそりゃそうか、と当然のごとく思った。簑笠府イリスとは世界を滅ぼす災厄の裏側、DreamEndとして討伐される運命の未来である。

「では、俺の将来、結婚する女性は現れますか?」と幸人は聞いた。だが、これは簑笠府イリスと運命共同体となった幸人の未来は、すなわちイリスの未来でも在る。


「彼女 ハ 悪魔の デス」京子さんはこう伝えてきた。この「デス」は「です」なのか、「Death」なのか?悩ましい、が。


続けて、円盤が動いていく。


「ハ、2 0 2 0 アサ マ エ ニ サヨウ ナ ラ」京子さんは「明らかに死ぬ(Death)」と伝えてくる。


(イリスは、つまり2020年の朝(DeadEnd)、を迎えることがないDreamEndとして、討伐される?それは何時頃かな?)と幸人は推理する。

(では、次もわたくしが聞きますね?)とアイコンタクトでイリスは伝えてくる。


「その別れは何時来ますか?」とイリスは京子さんに尋ねる。

「ア キ スキ」京子さんは「秋過ぎ」と言いたいようである。



「……これでもうわたくし達を追ってくる人間は誰も居ませんよ」とイリスは精密雁札(Supernote)による隠蔽によって、真夜中の降霊術の終了後に付けて来た、追跡者を振り払ったのを確認して漸く言葉を口にした。

「まさか、もう既にミッキーと早紀さんに僕は疑われてるかな?」幸人はイリスとの関係を巧く誤魔化した、と思っていたのだが。


わたくしも、疑われるのは此方と思ってただけ在って、幸人さんが疑われるとは思いもしませんでした。わたくしとしては沖ノ島君辺りを誑かして隠蔽しようと思ったのに」とイリスは不穏なことを言い出した。

「いやいや、沖ノ島と山乃原はうちのクランの最重要人物だから!!イリスちゃんは頼むからサークラ行為はやめてよね?」とクランのマスターである幸人がイリスに懇願する。


沖ノ島と山乃原は、幸人のクランの攻略チームの最精鋭である。世界の滅びを免れた後に待っているのが帰るべきホーム(ゲーム)の崩壊ではシャレにならないのだ。


「相手が勝手に熱を上げる分には不可抗力の事由なのでは?」とイリスは幸人達のチームのラインを先日共有したが、鬼のようなメッセージ連打してくる、モテない同胞の裏の顔を見せてきた。


そこには「今起きてる?」「簑笠府さん、可愛いよね」「彼氏いる?」みたいな感じの怒涛の連打してくる、普段の味気ない実務一色のメッセージしか飛ばさない仲間の姿が赤裸々に成っていた。


「沖ノ島、山乃原よぉ……」幸人はゲンナリしながらボヤいた。これは幸人とイリスの関係がバレたら崩壊間違い無しに成ってしまったのだ。

「うふふ、関係仄めかしの意味深なメッセージでも出しておきます?」ニヤニヤしながらイリスは蠱惑的に微笑んだ。このスケベ女は自身の裸体を出すことに微塵も躊躇いがないのである。


「一応は、今日はわたくしの将来の伴侶(意味深)の関係性を聞いたわけですし?」イリスはもう周知の事実で良いのでは?と問うてきた。冗談じゃない。対外的には幸人こそが不倫の相手に成るのである。

「……とりあえず、本当に付けてきたのは僕の方、なんだよね?」と幸人は念を押して聞いておく。


「はい、一旦私わたくし達が分かれて、合流先のこの公園に来る手筈でしたが……そこで追跡者が幸人さんに付いて来たので、精密雁札(Supernote)で幸人さんがそのまま自宅に帰宅した、と思わせておきました」イリスはそう言ってナイトゴーグルで全部見ていたと言う。

「念のためにお互いが夜間装備を用意しておいて切り抜けたって訳だ」幸人はそう言って背筋が凍る思いである。僕には騙し合いなどと無縁な生き方であったのだ。


「イリスが疑われてる、これは前提だったけど。何某さんの弟子で、世界の破滅を識らされて行動している同士でもあるのはミッキー(真行院幹雄)、早紀さん、イリス。だからお互いが別の結末(WorldEnd)を狙っている場合、途中で何時かは敵対する運命だ。でも道を違う前に先手を打って於けるなら、これに優る物はない。だからこそ僕は何某さんと予め知己ではないから最初から抱き込んでおくのが敵対者の戦略だろう。なのでイリスが不利である、早紀さんが有利であると思わせる方針を僕らは決めていた」幸人はため息混じりに言い切った。

「早紀さんには注意を払ってましたが油断してなかった、と。はぁ、本当に人の心が理解らないヒトね、早紀って。もうちょっとだけ遊んでくれてもいいじゃない……」イリスは忌々しそうに親友、そして終生のライバルに怨み言をボヤく。


「何かやりたい事が在ったの?いやこの場合、プレイ(意味深)とかでなくてね?純粋な意味でね?」幸人は可能性を先に潰しておく。

「いえ、わたくしも流石に空気を読みます。純粋に遊びに行きたかったの」イリスは年相応、いやそれより幼い感じの言葉で本心を吐露した。


「だって、ようやく陽の下で皆さんとプールに遊びにいったり、バーベキューとか、いっぱいいっぱい今まで出来なかったことをDEAD ENDまでにやりたかったんですもの」そういうイリスは普段の淫蕩な彼女ではなく、交友経験の浅い不憫な彼女であった。それを見たら流石のの幸人も叶えたく成るものだ。

「じゃあ、行こうか?海へ、クランの皆と。この際早紀さんとミッキーの思惑はこの際捨て置くね。今、ラインしたから。お、ミッキーはもう既に候補探してるってさ?」幸人は流石のミッキーと思った。此奴はやはり良い奴だ。


「まずはプール!!日焼けしたい!!出来る所!後は、うちのプライベートビーチで幸人さんとしっぽり二人きりで!」イリスは断言した。

「じゃあ、そのスケジュールで。ところで、親御さんに僕の存在はどうなっているの?」幸人は怖くて先延ばしにしていた事案を尋ねてみた。


「問題はありません。くだんの婚約者の件も一旦白紙になりました。元々、その人はわたくしの姉の婚約者だったので、つい最近そんな話が与太話として持ち上がっただけです」とイリスはそう答えた。


つまり僕は、新庄幸人は……イリス、彼女の言うところの倫理規定(モラルコード)に抵触する設定として、さも間男、もしくはセックスフレンドだと思わせる様に仕向けたのだ。


……あれ?ヤケに物わかり良いな?いや、そもそもイリスは陽の下で火傷を負うこともなく生きているという超常現象に説明が為されたのだろうか?と疑問が生まれてきた。

それに関してはイリスは、


「元々、簑笠府の家は、異能アビリティーの保持者として続いてきた家なんです、なのでこのオカルト案件は旧家の十二奥家としては何ら不思議なことではないんですよ」ととんでもない事を言いだしたのであった。

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